第18話 武器屋

 銀行でカードを作って、当面のお金の問題はなんとかなった。借金だけど。


「さて、とりあえずお金の心配はなんとかなったから、次はギルドかライセンス講習の申し込みかな? いや、その前に飯だな」

 どこからともなく、いい匂いがしてくる。


「それより武器屋に行くべき」

「武器屋? 武器屋に何の用だい?」

 チハルの思わぬ発言に俺は首を捻る。


「キャプテンは何も武器を持っていない。危険」

「え、武器が必要なのか?」

「護身用に武器を持つのは当然」


 そうなのか。てっきり宇宙は、前世の日本並みに安全なのかと思っていた。

 まあ、引き篭っていた俺は、セレストでも武器を持つことはなかったけどね。


 チハルに連れられて、二ブロック先の武器屋に案内される。


 武器屋には、剣や銃、アクセサリーなどが並べられていた。

 武器屋でアクセサリーは変な感じだが、これらみんな魔道具だ。


 魔道具か。そうなると俺には使えないな。

 魔力が高すぎる俺は、手加減しながら魔力を込めても魔道具を壊してしまう。


「いらっしゃい。何か必要ですか?」

 武器屋に似つかわしくない可愛らしい女性の店員が出てきた。


「武器と防具が必要」

「あなたが必要なのかな?」

「いえ、私は持ってる。必要なのはキャプテン」


 あれ、チハルは武装してたのか、気づかなかった。


「あ、こっちの彼ね。何か希望はありますか?」

「それなのだが、俺は魔力が高過ぎてね。魔道具が壊れてしまうのだ」


「え、魔道具が壊れる。またまた。そんな見栄を張らなくてもいいですよ。今魔力を測りますから、適正な物から選びましょうね」


 信じてもらえず、何か子供扱いされているようだ。


 店員はハンディタイプの魔力測定器を持ってきた。

「それじゃあ、これを手で握って魔力を込めてください」

「本当に壊れるぞ」


「大丈夫ですからどうぞ」

 どうなっても知らんぞ。

 俺は魔力測定器に魔力を込める。


 ボン!


 魔力測定器が煙を上げた。


「ちょっと何したんですか?」

「魔力を込めただけだが」


「本当ですか?」

「本当だとも、やる前に注意しただろう」


「信じられませんよ。測定器が壊れるなんて……」

「そう言われてもな……」

 俺が悪いわけではないよな。


 少ししたら店員も落ち着いた。

「すみませんでした、お客様の話を聞かずに」

「それはいいよ。俺には被害はなかったし。それで、俺が使える武器があるかな?」

「測定器が壊れるとなると、最高魔力に耐えるUR級でも壊れない保証がありません。逆に魔力がない人が使うN級の方がいいかもしれません」

「それは、魔力を込めなくても使える物なのか」

「魔導カートリッジを使うタイプです。使うたびにカートリッジの交換が必要になりますが」

「そんなのがあるのか。見せてもらえる?」

「あちらになります」


 案内された場所には、長さや形状の違う何本かの剣が並べられていた。


「こちらの剣がN級になります。このように、柄の部分に魔導カートリッジが入るようになっています」

 柄の一部が外れ、中に単二電池三本分位の魔導カートリッジが入っていた。


「柄のこの部分を回すと、刃に属性魔法を纏わすことができます。属性も炎、氷、風、雷の四種類を切り替えて使用できます」

 切り替え可能なのか、それはすごいな。セレストにも魔剣はあるが、複数の属性を切り替えるものは見たことない。


「触ってみてもいいかな?」

「構いませんが、壊さないでくださいね」

「魔力を込めたりしないから、大丈夫だよ」


 俺は苦笑いをしながら、渡された剣を受け取る。お、重い。

 普通の短剣なのだが、引き篭っていて、剣の訓練などしていなかった俺には、とても扱えそうになかった。


「もう少し軽い物はないですかね……」

「剣ですとそれが一番軽いですね。それより軽い物となりますと、ナイフになりますね」

「それをお願いします」

 剣はとても扱えそうになかったので、ナイフを見せてもらうことにした。


「こちらのナイフも柄の部分に魔導カートリッジが仕込まれていますが、剣と違って、単属性になります。魔導カートリッジもかなり小型になりますから、魔法が使える回数は十数回程度になります」

 こちらには、単三電池大の魔導カートリッジが入っていた。


 俺はいくつか触ってみて手に馴染んだ物を、取り敢えず、接近戦用に雷魔法が付与される物を一本買うことにした。

 戦闘以外にも、普通にナイフとして使えるだろうからな。


 ふと、気付くと、チハルが投げナイフを興味深そうに見ていた。

「欲しいのか?」

「武器は持っている」


「別に、予備の武器として買ってもいいじゃないか?」

「無駄遣い」


「予備を持つのは無駄遣いじゃないと思うぞ」

「それなら欲しい」


「じゃあ、これも買うことにしよう」

 チハル用に、投げナイフをセットで購入することにした。


 次に銃を見せてもらった。

 ライフルからポッケに入る短銃まで色々あったが、俺はリボルバー風の拳銃を選んだ。

 どうも周りの建物が西部劇風なので合わせてみた。


 これは、シリンダー部分が魔導カートリッジになっている。

 魔導カートリッジの交換は、弾を込める感じではなく、シリンダーごと交換になる。

 拳銃といっても、別に鉛の弾丸が飛んでいくわけではなく、引き金を引くと魔法が飛んでいくようになっている。

 魔力がある人にとっての杖と同じだと考えればいい。


 使う魔法の属性は切り替え可能だ。


 ちなみに、この魔導カートリッジには使い捨てと再充填できる物があり、値段は使い捨てが五百G程度、再充填できる物が一万G程度だ。

 再充填できる物は百回以上再充填できるから、使っていけば、再充填できる物の方が安くなる。

 ただ、使い捨ての方が、威力が強く、発射可能な回数も多い。


 俺はどうせ充填できないから、使い捨てのカートリッジを買おうとしたら、「船内のコンセントで充填できる」とチハルに言われた。

 ナイフ用に、再充填できる物を二個。拳銃用に、使い捨てを二十個、再充填できる物を三個購入した。

 戦うことになれば、主力は拳銃だ。拳銃用の魔導カートリッジ余計に用意しておきたい。


 最後に防具であるが、これは、店内に飾られていたアクセサリーがそうだった。

 アクセサリーは魔力によりシールドが張れる魔道具だった。


 不意打ちを避けるためには、自動防御のものがいいが、手動の物に比べれば、値段が高くなるし、大きさも大きくなる。

 手動のものなら指輪やイヤリングもあるが、自動のもので小さいものはペンダント、売れ筋となるのは腕輪らしい。


 俺は腕輪を二つ買った。

 セレストに帰ったら、一つをリリスにお土産として渡そうと考えている。


 購入した腕輪は、魔導カートリッジが内蔵式で交換することができず、再充填して使うタイプだった。船内で充電できるなら、これで問題ないだろう。


 まとめ買いで値引きをしてもらい、五十万Gにしてもらった。


「それではカードをお願いします」

「これでいいですか」

 俺は作ったばかりのカード出して、それで支払いを行う。初めてのお買い物だ。


「はい、ありがとうございました。あれ、お客様はシリウス皇国の王族なんですか」

「え、違うよ。どうして?」

「いえ、カードの情報で、名前がシリウスって」


「たまたま、一緒なだけだよ」

「そうですか。びっくりした。王族だったら失礼な対応をしてしまったかと思って」

 王族ではあるのだけどね。言わないでおくけど。


 それにしても、カードを使うとこちらの名前まで知られてしまうのか。

 その度にシリウス皇国の王族と間違われるのは厄介だな。どうにかならないかな。


 チハルに相談したら、カードの設定で、公開する情報を制限できることがわかった。

 名前のみを公開して、姓は非公開になるように設定を変更した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る