昇天

みんながだれかの子供だなんて信じられない。

――それは、感覚の母体の問題です。


割れた風船がかわいそう。

浮いて、浮いて、浮かび上がって、

ただ空を流れていただけなのに。


夕焼けに赤く染まった雲にぶつかって割れました。

それは先刻昇天した、

人間たちの魂です。


――私たちは生きていました。

  自由に、熱気を吹くんだバイタリティーを駆使して。

   そうして先ほど破れてしまいました。


まあるいまあるい宇宙の片隅に、

浮かんでいる光の筒、あれはなあに?

あれはどこかにつながるへそのおです。


生にすがるように生きていた、生きていた。

肉体という媒体から離れたとき、

私たちは新しい始まりに出会う。


それは風船のなかの空気が、

外の空気に

触れるようなものなのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る