泣ける話

@15jourin

第1話 起の起

 ネットに投稿された「泣ける話!」と話題の短編小説。

「どうしたら、泣ける話を書けるんですか?」

 チワワのアイコンの作者へ、メッセージを送信する。

 俺は、どうしても泣ける話を創りたかった。


 翌日、チワワのアイコンから返信が来た。

「ご連絡くださり、ありがとうございます。同じようなことを聞いてくださった方が、あなたの他にも、3人居ます。もし宜しければ、集まって小説談義でもしませんか?」

 思ったより物腰の柔らかい人だ。当然、すぐに返事をした。みんな、住んでいる場所は近かったようで、月末に集まることが決まった。ネットで知り合った人と会うというのは、少し怖いものがあった。そんなに沢山、詐欺師のような人はいないのかも知れないけれど。ほら、まぁ、騙されて怖い人に連れて行かれた、とか。色々聞くじゃないか。「強面の男達に連れ去られ、2度と帰ってくることはなかった……」じゃあ、それを語ってるのは誰なんだよ! ってな。

 それでも、集まるメンバーを教えてもらい、それぞれからアカウントをフォローされると、みんな良い人そうで安心した。

 チワワのアイコンの「鎌 成塗」さん。かまなりぬりさん、と読むのだろうか? 会ったら聞いてみなければならない。

 黒いアイコンの「須磨 穂太郎」さん。この人の名前の読み方は自力で見つけた。おそらく、スマホ太郎さん、なのだろう。

 原稿用紙柄のアイコンの「胡广」さん。「胡麻」と書けば「ゴマ」と読むが、「林」が足りない。こういう漢字があるのだろうか? 「广」は部首だった気がするのだけれど。なにせ、小学校の記憶だから判然としない。

 最後が、赤い栞のアイコンの「結実」さん。普通に「けつじつ」と読むんだろう、この人は。

 以上が、オフ会のメンバーとなるようだ。

 おっと、1人大事な人を忘れていた。

 この小説の語り手にして主人公。「俺」こと、朝日のアイコンの「東s」である。「トウズ」ではない。「アズマズ」でもない。「ヒガシズ」と読む。あるいは「ヒガスィズ」かもしれない。


 それでは、俺たちが出会ったところから、物語を始めようか。春の、月末の土曜日。よく晴れた、夕方。日が、西に入ろうとしている時間帯だった。俺たちは、駅前で待ち合わせていたんだ。

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