第3話 現在:結婚後のプラン(ちょっとR18)

 そう、結婚するのだとしたら、その後の生活のイメージを造らなくちゃいけない。「およめさん」は、起承転結の結ではない。そんなこと、十歳の頃から知っていたではないか。


「結婚したらさ、主婦になって欲しいとかある?」

「え、まさかまさか。今の時代、働いてもらわないと~。結衣の会社給料いいし制度整ってるし、辞めるってのはまずないでしょ」


 プロポーズもどきをされたのとはまた別のある日、私は彼に尋ねてみた。


 彼氏の言うことは、まぁ同世代の男性でも多い意見だと思う。大学時代の男友達や会社の同期も、概ねこんな感じだ。都会で生きていくにあたって、結婚してすぐに主婦になるということは生活水準を下げることを意味し、下がらないくらい玉の輿の相手を見つけたか、よっぽどの希望や体調などの理由がない限り、自分の周囲ではその選択をする人はいなかった。


 「およめさん」になって「おばさん」になる、そのルートは今の私にはないみたいだ。いや、絶対なりたくないと昔から思っていたわけだが。


「子供が生まれたら、産休育休取って復職するとしてさ、家事の分担とか大丈夫?」

「俺も一人暮らし長いし、大丈夫大丈夫」

「子育ては? 送り迎えとか、熱出した時に休めるかとか。貴方の仕事、朝早くて夜遅いでしょ。飲み会も多いし」

「あー……、それは、時短勤務するだろうし、結衣に任せたいかな。そっちの会社、そういうの理解あるでしょ?」


 まじ、ですか。フラットで対等な相手だと思っていたけど、当たり前のようにその役割はこちらに押し付けてくることに、違和感を覚えた。


「そんな思いつめんなってー。まだ子供できてもいないんだし、なるようになるって! 慎重に考えすぎても、未来は開けないぞ」

「んん~……」


(この状況で楽観視されても。なるようになるって、私がどうにかするしかないってことなの?)


 モヤモヤを抱えたままの私を抱き寄せ、彼が首筋に吸い付いてくる。その手は慎重とも乱雑とも言い難い、そう、言ってしまえば”ごく普通”の撫で方で肌を直接滑り、慣れた手つきで服を脱がせていく。確かに、首筋は私の感じる箇所ではある。私の身体を知り尽くした、と言えば聞こえはいいが、ただただ目的まで最短距離で到達しようとしているような、そんな印象が拭えないのだ。ここ数か月、いつも、いつも。私自身もこなれたようにそれなりの反応で彼を受け入れる。


 彼の指は私の中で踊り出し、内側の襞を押し込む。私が小さく息を漏らすと、それを合図にリズムを刻みながら、首筋を噛み、反対の手で胸の頂を摘まむ。私は意識を触れられている箇所に集中させ、一つの峠を越える。それを確認すると、彼は指を抜いて手早くコンドームを装着し、何も言わずに自分自身を私の中へ押し込めてくる。一度イかせておけばいいと思われているのが、癪だ。一応イったところで、満足には程遠い。そんなことを思いながら、私もまた、「早くイけ」と心の中で願いながら、下腹部に断続的に力を込めた。

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