真っ白なポスト

九太郎

第1話

白い雪が地面を覆っていてギュっギュっと歩く音が明確に聞こえる。

コートを着た30代くらいの男性が駅から雪道を目的の場所まで20分くらい歩いていた。


「…………」


男は手紙を取り出して、ポストを見つめる…すると……


「また来たんだね」


女性の声が聞こえて、男は声の方に向くと女性が立っていて男に話しかけていた。


「どうも、また来ました」

「あはは、いらっしゃ~い何かお土産ある?」

「その…すみません」

「あ~ごめんね、本気で捉えないで意味ないから、だって私…ーー」


少女の体がふわりと浮いて、ポストの上に座る。


「…幽霊だしね、私」


 幽霊が笑う。


「……いえ、いつもお世話になっているのでまた何か持ってきますよ」

「いいの? なんかごめんね~催促したみたいで」

「いいえ、話しかけてくれるだけでも大変助かりますので」

「ここにはいろんな人がくるけど、見えない人も多いからね~」

「最初の時はびっくりしましたよ、自分が幽霊だって言われて」

「あの時はまぁ~大変だったからね、君の様子を見ていたら」

「……まだやっぱり亡くなった彼女さんの事、忘れられない?」

「…………」


男は何も答えられなかった…


「でも君がここにきているということはそういう事だもんね、このポストって恋にまつわる場所みたいだし」

「みたいって…ご自身の伝説でしょ?」


幽霊は照れて、頬をかく


「私が伝説になるということした覚えはないんだけど…それに私って悲恋に終わっちゃったから……」


 幽霊は生前にとある男性と恋に落ちて結ばれるも男性が遠き地にいかなければならなかった…そして彼女は男性の事を思ってこのポストに手紙を出し続けた。だがその後彼女は不運にも亡くなってしまったのである。


その後は、その彼女の強い思いが恋愛のポストとして扱われて、「真っ白ポスト」とよばれ解体されずこの地に残されている。


「この恋をかなえてほしい願いはいっぱい見てきたよ?」

「そうですね…わたしと彼女もかつてはそのうちの一人でした……」

「うん…そうだね……」


 男は彼女が亡くなった後に思い出のポスト来ていて手紙を入れていた、かなわない思いとは気づいていたがそれでも奇跡が起こってほしいと手紙を6年間投函し続けている。


「あの…すみませんお願いがあるのですが…」

「ん?」

「亡くなった彼女と話すことはできませんか……? 彼女も幽霊になっていれば話すことができると思うんです」

「それは……きっと無理だよ……」

「どうして!」

「私にそんな力はないよ…見たり聞いたりしかできないから…」

「……そんな」


 男は疲れ切っていた、日々の事で彼女を思い出すたびに辛くなって落ち込んでいく日々、男は考えてしまう。


(私も彼女と同じ立場になるしかないのか……?)


 そう考えた時に足音が聞こえてきた、音に向くと小学生ぐらいの女の子が歩いてきていた、ポスト前に立って手紙を出そうとするも


「う~~う~~~とどかない~」


身長が足りず手を伸ばすもポストの投函口に手紙を入れられないようだ。見かねた男が


「手伝おうか?」


女の子は知らない人から話しかけられて困惑したが


「お願い!!」


男は女の子を持ち上げて、高さを合わせて女の子の手で手紙を入れれるようにした。


「ありがとうおじさん!! おじさんももしかして手紙を入れに来たの?」

「ん…?ああ、まぁね」

「一緒だね! 私もいっしょなんだ! 好きな人が遠くに引っ越しちゃうから…」

「……その、悲しくはないのかい?」

「うん……でも…好きなの…だからあえなくたって好きだって思いたいの!!」

「…………」

「じゃあね!! ありがとう!!」


そのまま女の子は来た道を戻って去ってゆく


「純粋だねぇ、あの子」

「ええ…そうですね…」

「忘れちゃだめだよ」

「え?」

「自分の『好き』を否定しないで、何があったとしても自分の愛したものから逃げたら愛したものを全部否定したことになっちゃう…だからその『好き』の思いは忘れないで」

「…………」


男は手紙を取り出して…そして…


手紙を破いた……


「すみません、お土産の話ですが…持ってこれないかもしれません…」

「あははっそっかー残念、でも仕方ないのかもしれないねー」

「……そうですね」


男は気づいた、これでもう幽霊とはお別れなのだと…


「今までありがとうございました」

「お礼なんていいよ、何もしていないから…でも…これからもがんばってね」

「……はい」

「うん、じゃあ」




「「さよなら」」

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真っ白なポスト 九太郎 @Ninetarou

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