パソコン

 真地間はエクセルに精通していた。それまで勤務表初めロッカーキー管理ファイル等10数件に及ぶファイルは、何れもそれなりに作成されてはいたが、これを関数とVBAを駆使し、完璧なものに作り上げた。

 この事により、管理センタービルの責任者から信頼を受けるようになった。

 それまでは、初心者程度のエクセル使用で、何かと不備が見受けられていた。支社にも時々顔を出し、従妹の村橋順子にアドバイスをしていた。


「お母さん、一郎さんのパソコンはありますか」

「2階の息子の部屋は、そのままにしてあります」

「見せて頂いてもいいでしょうか」

「自見さんも詳しいのですか」

「否、たいしたことはありません」


 真地間の性格か、部屋には余分なものは無く、質素な机の上にぽつんとパソコンが置かれていた。格別パスワードが設定されていないので、自由にファイルを開くことが出来た。全てのファイルが仕事に関することで、如何に真地間が真剣に仕事に取り組んでいたかが分かった。改めて有能な人材を失った悲しみと、この青年を死に追いやった責任を痛感した。

 母親に、暫くパソコンをお預かりしたい、それとご足労ですが、村越さんに連絡を取っていただけないでしょうか。

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