匿名メール

 大同警備は5年前からポータルサイトを立ち上げ、従業員の給与等はパソコン、スマフォで閲覧可能となると同時に、業務の透明化を推進するため、匿名でも本社コンプライアンス課にメールを送信出来るシステムを確立した。


 勿論根拠のない、単なる冷やかしの内容は取り上げないが、信憑性の高いものは慎重に協議し、内容がパワハラ、セクハラの場合は会長が特別調査員を派遣出来るようにした。


 総合ターミナル物流センター警備隊員からの匿名メールの内容は、真地間一郎の自殺が、近藤隊長や今枝副隊長、水野班長、木村班長、大前隊員、今泉隊員、藤堂隊員の7名のパワハラが原因だと書いてあった。


 メールに添付されたワードは長文だが、文章に纏まりがなく、状況も前後しているのでかなり読みづらい。

 しかし注目した点は、匿名者は、私は録音したスマフォを持っているので、もし、本社がこれを調査しないときは、労働基準監督署に訴えると。


 大同会長が憂慮した点は、この労働基準監督署に訴えるということである。3ヶ月前、図師課長から真地間一郎の自殺が仕事上の悩みと報告され、一件落着と思われたのに、このメール内容ではパワハラや同僚からの嫌がらせが原因だと書いてある。


「問題は、誰がこのメールを出したか。それと録音した事実は本当にあるのか、と云うことですね」と義弟が。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る