夢の続き
観覧車から帰るようにと促された少女は、不服そうに口を尖らせます。
「ここが寂しい場所ですって? あなたと一緒にいるじゃない。それにあなたはずっとここで一人なんでしょ?」
「私は大丈夫です。元から一人だったようなものですから。でもあなたはたぶん違う。今どのような状態だとしても、きっと仲間の元に戻るべきなのです。さぁ、一度元の世界に帰ってください。……大丈夫です、きっとまた会えますから」
しぶしぶと、何度も振り返りながら帰っていく彼女……
これで良かったと……彼女が二度とここへ来ないことを願うと、そう思いたい観覧車でしたが、その後も彼女のことを忘れられずにいました。少女が自分に強く意識の流れを向けていることが感じられたからです。
大事な人形やぬいぐるみを想うような気持ち。それを少女が抱いていることに、観覧車はもう疑いを持ちませんでした。あまり普通ではないことかもしれませんが、理由など分からなくても良いように思えたのです。
そして二度目の再会はそう遠くないうちに訪れました。
近づいてきた彼女の手を取るように、二人は引き寄せあいます。
二度目の再会の続き……
それが今です。
最初に言葉を交わしたあの日と同じように、何気ない会話は現在も続いていました。
「……あなたのゴンドラって上にあると同時に下にもあるよね。一つのゴンドラとして見たら、上に着いたらすぐまた下りていくんだけど、観覧車全体として見たらいつも必ず上にも下にもゴンドラがある。……それってどんな気持ち? あなたは高いところにいる気分なの、低いところにいる気分なの?」
「人間には血というものが頭の先から足の先まで流れているそうですが、それをあなたはどう感じているんですか?」
「あんまり何も感じないかも」
「私も同じかもしれません」
「そっか。じゃあ世界はどういう風に見えているの? 乗っている人のこととか、まわりの景色とか」
「難しい質問ですね。正直私はどこにいる感覚なのかよく分からないのです。あなた達と違って目や顔が決まった位置にあるわけではないので、全身で眺めている状態ですかね」
「そっか。アサガオも巻きつけそうな高いものに向かって伸びていくから、一体どこに目があるんだろうなーって思うけどね」
「アサガオ?」
「うん。花、知ってる?」
「花は知っています。花の絵が入った服や物を身に付けている人がいますよね」
一見たわいもないような会話が続く、意味や存在があるのかないのか分からない世界。不安定で寂しげな場所ですが、こうして話をできる今があるというだけで、温かく心地の良い空気が流れるのでした。
そんな中、観覧車はふと、前回聞きそびれたことを思い出しました。
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