考察する二人
K-enterprise
はじまり
「僕は、
「あ、はい。ありがとうございます」
私は彼、
「……」
「……」
「というわけで、じゃ」
黒田くんはそう言って立ち去ろうとする。
え?終わり?
「あ、あの!」
思わず呼び止めるが、その後に続く言葉は用意していない。
だって、普通は、告白の後にもっとこう、何か無い?
「…えっと、やっぱり嫌だとか?」
「そ、そんなことなくて、そうじゃなくて、あの…それだけなの?」
「…それだけ、とは?」
「その、告白…」
私の言葉に黒田くんは少し考える素振り。
「ごめん。言葉が想いに足りないって自覚はあるんだけど、僕は、その口下手なので」
いや、すごく簡潔に堂々とした告白だと思いました。
生まれて初めての経験だったけど、一生忘れるもんかってくらい。
「そんなことない。嬉しかった!…だから、あの私…」
「ああ、ごめん。相楽さんの気持ちも考えず勝手だよな。えっと、僕が君を好きなのは僕の都合だから、そこは相楽さんが気にすることじゃないよ。そりゃあもちろん、僕のことをいつかは好きになってくれるといいなとは思うけど、それは強要するものでも、何かの決断を迫るってこともしないよ。これまで通り、隣の席でいろんな話ができるといいと思ってるんだけど、相楽さん?」
私が唖然としている顔をおかしいと感じた黒田くんの言葉が止まる。
「ま、まさか、もう話もしたくないとか?」初めてだ。こんな焦り顔。
「ちょ、ちょっと待って。あの、ごめん、私も好きです!」
「何が?」
「黒田くんのこと!」
「何で?」今度は黒田くんが唖然としている。
「…何でと言われても…」
「…ごめん。まったく想定していない事態だ…」
「想定、してないんだ…」
普通は、誰かを好きになったら、その人は自分の事をそう思ってるんだろうとか、思わないのだろうか…。
思わないのだろうな…黒田くんは。
「えっと、もしかして僕らはお互いが好きだってことでいい?」
「…うん」
「相楽さんの僕を好きって気持ちは、どのくらいなんだろう?」
私はずっと指針としている言葉がある。
目の前にいる人に教えてもらった言葉だ。
「あなたのこと、ずっと想い続ける自信があるくらい」
彼はキョトンとした顔の後
「おんなじだ」と破顔した。
私たちはこうしてお互いに向けた想いを届け合い、その結果「恋人同士」に成った。
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