第62話 イチャイチャゲーム(2周目)

「じゃ、次は男子ね。慎吾、よろしく」

「あいよ」


自分の書いた命令に目印でもつけていればよかった、なんて思いながら箱の中をかき混ぜ、1枚引く。

そこに書いてあった命令は、「耳に息を吹きかける」だった。

誰だ、こんなの書いたやつ。


「いくぞ」

「かかってきなさい」


ふーっ、と優しく耳の穴を狙うと、真奈美はくすぐったそうに身を縮める。

もう一撃、二撃吹きこんでやると、真奈美がさらに縮こまった。

それが面白くてもっと吹きこんでやろうとしたが、真奈美がバッテンマークを作って静止してきた。


「もうダメ」

「なんでさ」

「これ以上は不健全!」

「ちぇっ」


真奈美がぷりぷり怒り出してしまったので、仕方なく手を引く。

広橋がニヤニヤしているが、次の餌食は君だぞ……いや、広橋なら喜んで吹きかけられるか。


「次、次! 和泉くん、引いて!」

「俺かあ……えーと、『次の番まで膝枕をしてもらう、ただし2周目ならゲーム終了まで』……」

「はい、どうぞ!」


和泉のクジの内容を読むやいなや、広橋がすぐに正座して、ぽんぽんと膝を叩く。

和泉は少し躊躇はしたものの、そこにぽすんと頭を乗せた。

広橋は、幸せそうに和泉の頭を撫でている。

ちくしょう、俺が引いて真奈美にしてもらうはずだったのに。


「……やば」

「なんか、すごい」

「和泉がどんどんダメになっていく感じがする」

「わかる」


当の和泉は、半分目を閉じかけており、このままだと本気で寝落ちしかねない。

いや、それもまた面白いな。

このまま寝かせてやろう。


「ラスト行こうぜ。バッシー、引けよ」

「恥ずかしいのだけは勘弁な……と、サンキュ」


抱かれたままバッシーが弾けるように、三尋木が箱を手元に寄せる。

さっきからずっとニヤニヤしっぱなしだし、よっぽど三尋木は離れたくないんだろう。

その三尋木が、一瞬で顔を真っ赤にした。今までも赤かったけど、今回はその比じゃない。


「何引いたんだよ」

「ほい。『耳元で愛の言葉を囁く。何を囁くかは本人が決めた1つ+他のペア2組から募集した4つの計5つ』」

「「「おお〜〜??」」」


和泉以外の3人で、ハモった。

これは、面白い三尋木が見られるかもしれない。

和泉が寝てしまったので、今回は三尋木が言われたいセリフを含めた5つにすることにした。

三尋木のセリフを見ないために背中に顔を埋めるバッシーのせいで、三尋木がなかなかセリフを決められなかったのは置いといて。

俺は、安直だが「愛してるよ」にしておいた。


「三尋木が目隠ししたら面白そうじゃないか?」

「慎吾」

「櫻木さん」

「「天才」」

「だろ?」

「え、目隠しって」

「自分の手で覆ってればいいから。何言われるかわからなくするため」

「なるほど……じゃあ、お願いしますね、剛さん」

「ほい……これさ、全部見て、いい感じに並べ替えるのってアリ?」

「いいよ」

「サンキュ」


バッシーの、愛の囁き5連発が始まる。


「愛してるよ」

「ひゃいっ」

「文の全部が好きだ」

「はぅ」 

「恥ずかしがる文も、可愛い」

「ゃっ」

「一生、離さない」

「ぁ」

「今晩、ウチ来いよ」

「……はぃ……」


三尋木は、完全に茹で上がっていた。

頭から湯気が出るんじゃないかと思うほどに。

ていうかバッシー、さりげなく誘ったな?





こうして突発的に始まったイチャイチャゲームは終わりを迎えたのであった。

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