第61話「仲間が増えた!」

 午後1時30分から、局長室において……

 『面接』を申し入れて来た審査部付き、バルテレミー・コンスタン、

 同じくイネス・アントワーヌの面接が行われる。


 ちなみにバルテレミーの年齢は28歳、イネスは25歳。

 シモンとエステルより少し年上である。

 所属が、『審査部付き』となっているのは、仮配属の為と人事部から知らされていた。


 対して、シモンとエステルはふたりで試験官として臨む。

 時間が限られているから、全てを聞き取る事は不可能だが、面接の質問は多岐にわたる。


 面接時間は各30分。

 もしも話が盛り上がったら、延長もありうる。

 だから一応ふたりには1時間と告げていた。


 まずは自己紹介、自己PRをして貰う事に始まる。

 簡潔に自分を説明する事、そして自分の強み・長所は勿論、

 弱み・短所も自ら語って貰うのだ。

 また短所を改善する為に心がけている事も。


 自分を例える色、もしくは物、動物を告げて貰う。


 リーダーシップを取った経験。

 成功体験、失敗体験も。


 最も感動した事。

 最も嬉しかった事。

 最も悔しかった事。

 最も長く続けて来た事を尋ねる。


 趣味。

 尊敬する人物。

 最も感動した事も。


 大切にしている言葉と夢。


 周囲からの評価。

 友人間での自分の役割、ポジション。


 ズバリ、どのような相手が苦手かも聞く。

 今後のキャリアプランはあるのかも。


 仕事とは何か?

 仕事で大切だと思う事。

 そしてやりがいとは?


 仕事を通じて、どのように成長したいか?

 仕事とプライベートはどちらが大切か?


 誰にも負けないと思う事。

 配属したらどんなメリットがあるか?

 そして面接官なら、自分自身を採用するのかどうか。


 新しいビジネスモデルの提案はあるのか。

 王国復興開拓省は、どのような仕事をすると考えているのか?

 仕事で最も大切なものは?


 土日勤務に関して抵抗はないか。

 一生、働きたいと考えているのか。

 休みの日はどうやって過ごすのか。


 そして、最後に何か質問はあるのかと。

 新入社員へするような質問もあるが、シモンは答えの内容は勿論、反応も確かめたい。


 さてさて、午後1時30分。

 時間となった。


 とんとんとん。

 同時に、局長室の扉がノックされた。


 最初に面接を行うのは、イネスである。

 彼女は建築の専門家だ。

 実家は工務店を経営している。


「はい」


 ノックに対し、エステルが返事を戻すと、


「イネス・アントワーヌです。面接に伺いました」


 こうして……

 シモン達の『仲間』を増やすアプローチが、遂に始まったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 質問はシモンがする形であり、エステルはフォロー及びチェックを行う。


 人事部の資料でふたりのプロフィールは認識している。

 なので、分かり切った事は質問しない。


 シモンは、自分の強みをどう活かすのか、もしも考えているプランがあれば話して貰う事にしていた。


 様々な質疑応答をして行くうち……

 イネスは理知的で冷静沈着なタイプだと分かる。


 しかし、自分の仕事には熱い思いを持っているようだ。


「局長、私は王国民の住生活を少しでも改善したい。ありとあらゆる建築技術、魔法を駆使し、その土地に適合した機能を持ち、快適で暮らしやすく、それでいてお洒落で且つリーズナブルな価格の家屋を提供したいのです」


「そうか。イネスさんの持つこころざしは立派だ。でも住民の家造りだけじゃない、俺達がになうのは村や町という規模の仕事だ」


「はい! 大きな規模の仕事もぜひやってみたいです」


 臆さずきっぱりと言い切ったイネス。

 心技体、問題はない。

 彼女は『仲間』に相応しい。


 エステルを見れば、大きく頷いている。

 しかし、この場で返事は出来ない。

 もうひとりバルテレミーの面接が終わってからだ。


「イネスさん、貴女の面接はこれで終了だ。待機しているバルテレミーさんへ面接に来るよう伝えて貰えるかな」


「かしこまりました、局長。では、失礼致します」


 イネスが去って5分後に、再び局長室の扉がノックされた。

 エステルが返事を戻す。


「はい」


「バ、バルテレミー・コンスタンです。め、面接に伺いました」


「入室を許可します。入ってください」


 バルテレミーの実家は、地方の大規模農家。

 彼は次男である。

 

 少し緊張しているようだ。

 自分より若いシモンが、ひとりでオーク100体を倒した猛者だというイメージがあるのかもしれない。


「そんなに硬くならず、リラックスしてください、バルテレミーさん」


「は、はい」


「雑談から行きましょう。バルテレミーさんが一番好きな野菜は何ですか?」


「す、好きな野菜?」


「はい、俺はカブが大好きなんです。俺のウチは農家ではなかったですが、貧しかったので、庭にいろいろな野菜を植えて、自給自足していました。カブは育てやすいし、短期間で収穫可能ですから」


「お、おっしゃる通りです。使い勝手も良いし、カブは素晴らしい野菜ですよっ!」


 バルテレミーはそう言うと、『カブ』について熱く語り始めた。

 

 育成方法から、食べ方まで……

 好きな野菜についていろいろと語り続けたバルテレミー。

 これで完全に緊張が解けた。

 

 リラックスしたバルテレミーは、自分が考えている新たな農法を熱く語る。

 生産力を格段に増し、飢える人を少しでも無くしたいと。


 イネスに勝るとも劣らず、バルテレミーも大きなこころざしを持っていた。


 質疑応答を重ねた結果、バルテレミーも『合格』となる。


 翌日……

 シモンはすぐエステル経由で書類を回し、上司3人のOKを貰った。


 これで、正式にイネスとバルテレミーはシモンの部下となったのである。

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