第37話「初出勤!⑥」
シモンの人生のリスタート。
王国復興開拓省における記念すべき初出勤日。
朝礼後に、アレクサンドラの指示で行った次官リュシー、次官補レナとの3者幹部会議。
会議終了後、シモンは上席のふたりへ、
「局長として、自分が行う仕事の段取りをどう組み、進めれば良いのか?」を改めて尋ねてみた。
するとこの会議で……
シモンがいろいろな提案をしてくれた事に上機嫌のふたりは、シモンの意見を肯定した上、笑顔で教えてくれた。
「王国復興開拓省においては、各自が命じられた役割と課題を決められた期日までに達成すれば、後は個々の裁量に任せる」
「但し、いわゆる指示待ちではいけない。様々な方法を駆使し、王国内のあらゆる課題を見つけ出し、画期的な提案を随時行う。上司の了解を取った上、活発に動くように」との事。
ふたりの上司のコメントを聞き、シモンは改めて理解した。
与えられた課題の根本は、先ほど自らが提案した3点であると。
王国から与えられる予算以外に資金調達の為のビジネススキーム、優秀な人材確保、ワールドワイドで詳細な情報の収集、それらの模索と実施、それらに付随するもろもろ。
以上の3点において……
ここ1か月内には方向性に関し、とりまとめ、何らかの『めど』をつけたい。
という3者の意思を共有。
まとめたものを次官のリュシーから、長官アレクサンドラへ、もろもろあげて貰うという。
リュシー曰はく、アレクサンドラは宰相マクシミリアン殿下との打ち合わせに忙しく、予算の確保も大変らしい。
各省との付き合いも煩雑らしく、多忙を極めているという。
なので、この3人により、ある程度のプランをとりまとめる必要がある。
幹部職員会議終了後……
シモンは自分の部屋へ戻ると、早速ストロベリーブロンドの美女、秘書のエステル・ソワイエを呼び、いろいろ話し合った。
会議の情報を共有し、問題点、改善点、そして次回提案すべき部分の意見交換をした。
エステルは、シモンの語る王国復興開拓省の企画案も頷き、同意。
趣旨もすぐ理解してくれた。
控えめにだが、いろいろ意見も出してくれる。
意見交換の後は、雑談も……
まずエステルはシモンの研修『オーク討伐』を聞いていたらしく、
「局長はお強いです! 凄いです!」と大いに褒めてくれた。
そして、初めてシモンが王国復興開拓省の庁舎を訪れた時……
1階奥の魔導昇降機乗り場ホールで、出会った話から火が点き……
ふたりの会話はどんどん盛り上がって行った。
話が進むと、シモンとエステルの意外な『つながり』が判明する。
「局長は
「へぇ、エステルと俺は同い年か……そうなんだ……でも、俺、大学とバイト先の往復みたいなワンパターン生活でさ。学費、生活費を稼ぐのに必死で友達作る余裕なんかなくて、完全にボッチだったよ」
「そうなんですか。局長はとてもご苦労されたんですね。もっと早くお会いしたかったです」
「あはは、もしも学生時代にエステルに会っていたら……いや、何も変わってなかったな、多分」
「でも私、女子校のロジエ魔法学院出身で、今まで彼氏居ませんでしたから、局長へ猛アタックしていたかも」
「俺に? 猛アタック? まさか!」
「うふふ、私、誠実で努力家がタイプですから」
「努力家……そうか、俺、頑張るだけが取り柄だからなぁ……」
「その頑張りがあって、今があるんですよっ! 凄いですよ! 私と同い年で王国復興開拓省ナンバー4なんですよ!」
猛アタックは社交辞令だとしても……
アレクサンドラ
研修では、オークの大群をひとりで簡単に屠った。
自分と同じ年齢のシモンに、エステルは尊敬の念を持っているらしい。
というわけで話し込めば込むほど、シモンとエステルとは、打ち解けて行った。
彼女は美しいだけでなく真面目で聡明。
気配り上手、感性も鋭い女子であった。
改めてエステルへ聞けば……
やはりアレクサンドラが秘書になるよう勧めてくれたそうだ。
魔法使いとしては、水の属性を持つ魔法使いで、攻防の上位魔法を習得しているという。
またいくつかの支援魔法もたしなむ……らしい。
こんなに良き人材を、すぐつけてくれるとは……
やはりアレクサンドラは、優れた上司というだけでなく、面倒見の良い先輩なのだと、シモンは大いに感謝し、一層やる気も出て来る。
優秀なエステルには、秘書の一般業務だけでなく、副官として支えて貰いたいと思う。
さてさて!
エステルからは尊敬の眼差しで見つめられただけでなく、ランチの同席までせがまれてしまった。
シモンは何度か断ったものの、彼女の強烈な押しに負け、つい一緒に食事してしまう。
ちなみに、先日のオーク討伐見学研修は、全員が完全に仕事モードだった。
シモンは、美しいリュシーとレナを完全に『上司』としてみていたので、あまり女子として意識はしなかった。
だがエステルは違った。
職員食堂とはいえ、気が合う素敵な女子と対面ランチしたら、夢ごこちとなってしまった。
きわめて平静を装いながら……
「エステルは、今後自分と円滑に仕事をする為、仕方なく話を合わせ、業務上、一緒にランチへ行っただけだ」
と、シモンはたかぶる気持ちを、必死に押さえつけていたのはいうまでもなかったのだ。
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