二月十六日(火)

 彼女のことを考えていたら、次第に、自分が彼女に好意を持ったのは結局のところ何故だろうと考え始めた。

 共通の趣味があるわけでもない。まず、趣味を知らない。やはり彼女の好きなものの一つも知らないのだ。こちらは、というと、本もけっこう読むし、音楽もけっこう聴く。そういう話をしたことがない。

 何か特別な出来事があったわけでもない。運命的な出会いとか、二人だけが共有する思い出とか、物語るようなものは何一つない。

 さて、わからなくなってきた。

 数日前を振り返ってみる。

  どんなときも、誰の前でも、ずっとにこやかに笑っていて、裏表のない人――。

  こんな内気な人間に対しても、周りと区別せず、やさしい笑顔を向けてくれる

  ――。

 そうだ、彼女の、誰にも似つかない、あの佇まいが、好ましい。

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