第28話 断罪される勇者(1) ——side カトレーヌ
「ケッ。なんで俺がアイツの仕事を——」
グスタフが悪態をついている。
今、あたしたちは馬車に揺られ、ディアトリアの廃墟に向かっている。
「王国からの依頼だから仕方ないじゃん。あんただって、汚名返上するために受けたんでしょう?」
「ふん」
馬車の中の空気は冷え切っている。
正面にグスタフ、あたしの隣には、魔法使いのギナがいる。
ギナは、グスタフが連れてきた魔法使いだ。
彼女は無口で、なおかつ自ら行動しようとしない。
「アンタの行動は全てレナ王女殿下に伝えることになっているから。変な気起こさないで」
「へいへい」
あたしは、パーティメンバーと勇者候補のグスタフの監視役を兼ねていた。
王国騎士ボリスが引き起こした事件。
王国兵士や傭兵を巻き込み、勇者パーティを誘い……聖女であるマエリスを怪しげな儀式に用いようとした事件。
ボリス含め、王国に敵対する者達に加担したという疑いが持たれている。
もっとも、本人は騙されていたと証言しているし、勇者候補があまりに貴重であるという理由で処遇は一旦保留となっている。
事件までは、勇者候補という身分を盾に、ある程度自由にしてきたグスタフ。
裏で何をしていたのかは分からないが、今ではあたしや他にも監視役がいる。
もう、扱いは犯罪者のそれだった。
————
馬車に揺られながら、アタシは先日のことを思い出す——。
レナ王女殿下と勇者候補グスタフが、王城の会議室で話をするらしい。
アタシも参加を促され、同席することになる。
その場で行われたのは、グスタフに対する断罪だった。
「グスタフ殿。あなたには、大変失望しました」
「ハッ……いえ……あれは」
グスタフは、しどろもどろになっている。
「リィト殿をパーティから追放したのは、大きな失敗でしたね。彼はこの国から出て行ってしまいました」
王女殿下の引き留めも叶わず、リィト君は隣国に行くと宣言した。
静かに話している姫殿下の声は低く、怒りをぐっと押さえているようだ。
「いえ、アイツは……役に立たずで——」
ダンッ
ついに、レナ王女殿下が机に拳をぶつけ、大きな音を立てた。
「ひぅっ」
グスタフはびっくりしたのだろう。
小さな悲鳴を上げた。
権力にはとことん弱いようだ。
「そ、それにパーティの戦力を——」
「はぁ……」
レナ王女殿下は、溜息をつきグスタフの言い訳を流した。
既に対話になっていない。
それほどの怒りなのだろう。
これは、この様子は……もはや断罪だけでは済まないだろうとアタシは感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます