第三十六話 ある日の魔王の冒険譚

私は全身の筋感覚に集中する。ここはmezzo pianで、そこからcrescendoしてゆく、ここからの小節♮、♭臨時記号に気をつけて感情を盛り上げてゆく、fortissimoここで…爆発…! 


ビー!

電子音のブザーが鳴る。


”だめだ。能力が安定していない。もう一度最初からやり直してくれ”

高い天井のどこにあるかすら分からないスピーカーらしきモノからの声が部屋に響き渡る。


「はぁ、はぁ、・・・」

呼吸を荒くし、全身を脱力させ前かがみになると額から汗が何滴も滴り落ちた。


身体を起こし、天井から照らす強くまっ白な照明の光を暫く私は見つめる。そして目を瞑りまぶたの中に焼き付いた照明の残光を視覚しながら呼吸を整える。鼻から大量の空気を吸い、口からフーっとゆっくり吐き始め何度もそれを繰り返す。そして目を開け視界の情報を脳に取り入れるのだ。透明なガラス張りで囲まれたこの部屋、四方には録音する為のマイクがあり、ガラスの向こうでは研究者達が忙しく機器を操作し作業している。


私は指先の関節の動きを確認しながら、手首、肘そして肩甲骨を可動させ仙骨に至るまで全身の筋感覚とエネルギーの流れを確かめる。そしてシールのように体中に張り付けられた配線、この生体情報センサーを見るたび私は実験用のモルモットにでもなったかのような気分になる…


「ああ、忌々いまいましい…」

私はそう小声で呟いていた。


”どうした?早くしてくれ”


「今は何時?」


”時間なんてどうでもいいだろう。さあ早く弾いてくれ、でないと…”


「今は何時って聞いているのよっ!!!」

少女の張り裂けんばかりの怒鳴り声が部屋に響く。


”ま、まて。何をそんなにイラついてる?今はまだ4時だ”


「・・・」


「終わりよ、今日はもう終わり」


”何を勝手に、今日の予定では”


「あら、そんな事言っていいの?研究に協力する代わりに私の自由は約束されているはずよ。それとも、あの方に確認してみる?」


”・・・”

”わ、わかった。今日は終わりにしよう”


「ええ、ありがとう」


そう言うと楽器を置き部屋を出る。長い廊下と幾つかの扉をくぐり抜け自室に入り、そして直ぐに服を脱ぎ棄てシャワーを浴び始める。ラボでの演奏は本当に疲れる…


「もうこんな時間、急がないと」

すぐに支度し外出の準備を整え始める。


「んん~もう!髪の毛早く乾いてよ~」


「えっと、今日はこれにしようかな、あ、でもあんまり派手だとあれかな~」

慌てて乾かしながらも、衣装ケースを開け洋服を取り出し、幾つかの候補の中から一つに決め、慌てて着替える。


「もう!こんな時間!どうしよう遅れちゃう!」

支度を整えた少女は小走りになりながら建物の外へと駆け出してゆくのであった。


――――――――――――


―――――――


――――


大きな噴水、大きな柱時計、その近くで商店のショーウィンドウをまじまじと見つめる少女。枝木にからすの人形がビックリ箱から現れたピエロのように、バネで左右に揺れている小さな置物を目で追いながら、見つめている。


「可愛くないなぁ、こんなの誰が買うんだろう…?」

そう呟いているとそこにもう一人の少女が駆け寄って来た。


「ごめんなさい花岡さん!ハァ、ハァ、遅れてしまいました」


「あ、詩子ちゃん!ううん全然大丈夫だよ!」


「ごめんなさい」


「詩子ちゃんは毎日バイオリンの練習で忙しいのに付き合って貰えるんだもん大丈夫!」


「あ、ありがとう」


「それじゃあ行こ!まずはこっちー!」


こうして元気よく歩き出す花岡さんを見ているとさっきまでラボで辛い練習をしていたことが嘘のように思えてくる。友人とお買い物なんて一体何時ぶりかしら、私は花岡さんに案内してもらい尼宮駅に隣接したショッピングモールを歩いて回る。


「詩子ちゃんはここまだ着た事ないんだよね?」


「ええ、引っ越してきたばかりでまだこの街の事は全然しらないの」


「そっかー、じゃあ今日は面白いとこ沢山紹介するね!」

そして二人は洋服店エリアを散策し始める。


「詩子ちゃんの私服初めて見たけどすっごく綺麗だねー。ホントお嬢様って感じ!」


「そ、そうかな?私あんまり流行とか知らなくて、ほとんど母がコーディネートしたのしか持ってないの」


「そうなんだ、ん~なんかね…」


「大人っぽい!すっごく大人ぽくて詩子ちゃんらしいかなー。私じゃ全然似合わない系だ!」


「そんな事ありませんわよ、花岡さんはいつも自分で選んでるの?」


「うん、そうだよ。私は結構シンプル目のが好みかな。ほら!これとか」


「どうかな?」


「ええ、凄くお似合い!花岡さんは明るい色が似合いますわね」


「そうだよね~」

二人は雑談をしながら気になった幾つかの店に入り服やアクセサリーなどを見て周った。


「じゃあ次はカラオケでも行こっか!詩子ちゃんなら歌も凄く上手そう!」


「カ、カラオケ…」


「どうしたの?あ、詩子ちゃんもしかしてカラオケ苦手?」


「い、いえ。苦手というか…私行った事ないの…」


「えー!そうなんだ!じゃあ別のにしよっか」


「あ!いえ、カラオケで良いの。私はあんまり歌えないけど花岡さんの歌聞いてみたいし!」


「うーん、私もそんなに得意じゃないんだけど、詩子ちゃんの初カラオケ行こっか!」


カラオケボックスに向かう花岡さんの後を、私は金魚の糞のようについてゆく。一歩一歩カラオケに近づいてゆくと思うと心臓の高鳴りを感じる、いやこれはカラオケという単語を耳にした時からだ。落ち着くのよ詩子、私はそう心で自分自身に語り掛けてあげる。これは想定していた事よ、そう花岡さんから遊びに誘われ時とても嬉しかった。とてもとても、でもそれと同じくらいに不安でもあった。何故なら私は友達と遊んだ記憶があまりないから…


花岡さんに楽しくないと思われたくないもの、私は事前にネットで検索しまくった。友達との遊び方を。そして、幾つかの定番の遊び方となるモノがある事を知ったのよ。お買い物からのカラオケは定番、そうこれは想定済みなのよ詩子。カラオケとは小さな部屋で歌を唄う遊び、お互いに歌い、聞き合うただそれだけ。幸い私はバイオリンを学ぶと同時に幼少期の頃に音階を声に出すという練習をした事はあるし、楽典がくてんやコード理論、バッハの対旋律たいせんりつ和声わせいも習得しているのよ!


そう!今日の私に隙はないのよ!


そうこう頭の中で激しく思考を巡らせていると、あれよあれよと花岡さんはカラオケ部屋まで案内してくれた。小さな個室で上着を脱ぎソファーにちょこんと座る私。


「詩子ちゃんは普段どんな曲を聞くの?」

花岡さんはそう言いながらタブレット端末を私に渡して来た。


「そ、そうね」

私はその端末を受け取り画面を見ながら答えようとする。


「私はクラシッ…」

ここで私の最大のミスが発覚する。


そう私の大好きなクラシック音楽に歌詞はない事に今気づいた。私にとって楽器の音色が声だと勘違いしていた。いや正確にはあるにはあるがそれはオペラや歌曲と呼ばれる類で、私が歌えるとは到底思えない。これは緊張のせい?自分の馬鹿さに自分が驚いた。


「え、ええと」

タブレット端末の流行りの曲ページをタッチペンでどんどん下にスクロールするが、どれも見た事もましてや聞いた事すらない曲ばかりであった。


「詩子ちゃん初めてだもんね、じゃあ私が最初に歌うね!」

そう言うと花岡さんは慣れた手つきで操作し、マイクを手に持ち唄う準備をした。


曲が始まり花岡さんが唄い出す。今まで聞いた事のない高く澄んだ歌声、普段より低い男の子っぽい声、歌っている曲がどういう曲かは全然知らないけど私はただただ見とれた。見とれたまま曲は終わりを向かえ、私はハッと思い出したかのように拍手をした。


「にひひ、私そんなに上手くないでしょ?」

照れ笑いしながら飲み物を飲む。


「う、ううん!凄くお上手!私ビックリしましたもの!」


「えへへ、ありがと」


目の前で人が歌うというのはこんなにも迫力があるとは思わなかった。それに部屋が狭いからだろうか私が普段聞いてきた音楽とは別の迫力のようなモノを感じた。クラシックばかりでポップスなんて今までまともに聞いてこなかっただけに大きな衝撃を受けたのだ。


「今の曲はどなたの曲なのかしら?」


「うーんとね今のは、ボーカロイドってジャンルの曲なの」


「ぼーか、ろいど?」


「うん!えっとねなんというか、ボーカルは人じゃなくて機械が唄ってるんだけど、それを歌が上手い人達がカバーして歌ってみるってのが今流行ってて、私も大好きなジャンルなの」


「そ、そうですの?機械が、そんな音楽初めて聴きましたは」


「それにね、今はヴァーチャルシンガーっていうのも居てね、ほらこれこれ」

花岡さんはスマホを見せてくれた。


「こんな感じで3Dの可愛いキャラクターが歌を唄うんだよ!」


「まぁ、凄い!この声が機械だなんて!?」


「うーん。。。それを言われるとアレかなぁ」


「?」


「えっとね、本当の事言うと唄ってるのは人で、人がこの3Dのキャラに声を当ててるの。声優さんみたいな感じかな?現実には居ないネットのヴァーチャル世界に居るって設定なの」


「ネットの…なるほどそういう事ですのね」


「うん。私はね一つの曲をいろんな人がカバーして、いろんなアレンジを聞けるっていうのがボーカロイドってジャンルの良い所だと思うの。だから好きかな」

その言葉を聞いて驚き詩子は答えた。


「あら!驚きましたは!私がクラシックを好きな理由と同じ!」


「え?そうなの!?」


「偉大な作曲家達が作った名曲を何百年も演奏されてきて、演奏者はその曲をどう表現するかが課題ですもの。私はそんな色々な表現幅が存在するクラシック曲とクラシック楽器が好きだったのよ」


「あ、そっか!そうだね、じゃあクラシックと同じかも!」


200年、300年立ってインターネットが身近になって世界は目まぐるしく変化しているようで、実は歴史の繰り返しなのかもしれないと私はこの時感じるのであった。


「ねぇ、花岡さんそのヴァーチャルシンガーのオススメ良ければ教えて下さらない?


「うん、いいよ!私はこれとか、あとこの人のとか好きかな!」


「ありがとう」

幾つかの曲を教えてもらい二人で曲を聞く。どの曲も独特でありながら歌詞に深い意味を感じたり、歌声の表現力の高さに私は驚いた。私はポップスはただの商業音楽、お金儲けをする為だけの大衆受けだけを狙った幼稚な音楽ジャンルだと思い、今までちゃんと聞いてこなかった。しかし花岡さんの紹介してくれたヴァーチャルシンガーが歌う曲はそのイメージを覆したのだ。


そしてそれらから受けるイメージを言語化するとすれば…


「自由…自由で楽しそうに歌うのね」


「そうなのかな?まぁ詩子ちゃんが気に入ってくれたなら嬉しいかな!」

花岡さんは笑顔でそう言ってくれた。その笑顔を見た時、演奏者である私の心の中に何か新しい感情が芽生えたのを感じた。従来のバイオリニストでは思いつかないそれは何か新しいアイデアのようにも感じた。


「じゃあ、次詩子ちゃんの番!」

花岡さんはカラオケの端末を渡して来て、受け取るが私は困惑しながら答えた。


「あ、あの私流行りの曲は全然知らなくて。その、」


「流行りなんて気にしなくて良いんだよ!自分の歌いたいのを歌えば良いんだよ詩子ちゃん」


「そ、そうですの…」

私は考えた。考えたその先、その言葉に背中を押されたかのように勇気を出して一曲を登録した。


そして曲が始まる。ピアノの高音の連打音から、重い雰囲気のシンフォニーが部屋に響き渡り危機感せまる音楽が部屋中を包み込む。私はマイクを両手で握りしめ一呼吸すると唄い始めた。唄われたのはシューベルト作曲、ゲーテ詩の魔王である。


普段のバイオリン演奏では、曲を弾く事で生じる感情、その感情に支配されないように冷静にコントロールしているが、今はこの曲の感情を感じるままに我慢せず精一杯唄った。唄い終わると盛大な拍手を受けた。


「詩子ちゃん、凄ーいい!」


私は恥ずかしさでいっぱいだったが、この感情はなんだろう。思いっきり唄って、感情に身を任せて凄く満足感に満たされていたのだ。こんな感覚いつぶりかしら?私ってこんなに大きな声が出るんだと自分自身が驚いていた。


「歌凄く上手だよ、なんか凄い迫力あった!それに詩子ちゃんってドイツ語分かるの!?」


「え、ええ。小さな頃から習わされて、ドイツ語と英語を…」


「凄いね!詩子ちゃんスペック高すぎだよ!」


「いえ。私は言われた通りにしてきただけで…」


「じゃあ私も負けてられないなぁー。次はこれ唄う!」


こうして私の初めてのカラオケはあっというまに時間が経ち、花岡さんと過ごした時間はとても幸せで忘れられない記憶として納められるのであった。


「あーもうこんな時間だー。これ飲んだら今日はここまでかなぁー」


「ええ、今日はとても楽しかった。案内してくれてありがとう」

二人はカフェで買ったミルクティーを手にしながら歩く。


「あ!そうだ!最後にとっておきの場所見せたいの!こっち!」


「とっておき?」

そう言うと花岡さんは私の手を取り歩き出した。


二人は人気の少ない廊下を通り、何やら非常階段のような所を上ってゆく。五、六階分は階段を上っただろうか、私は一人息を荒くし一生懸命花岡さんについてゆく。


「ほら!ここ!着いたよ」


花岡さんは扉の前で私を待っている。息一つ切らしていないその姿を見て、体力の差を痛感した。


「ここは?」

質問すると同時に目の前の鉄の扉が開けられた。


「じゃじゃーん!」


二人で扉をくぐると、そこに凛とするような冷たい風が吹き、小さな光が遠くに沢山見える屋上らしき場所だった。


「凄い、綺麗な夜景」


「でしょー、この前迷子になって偶然見つけたんだー」


「でも、ここって入っていいの?」


「うーんとね、多分、ダメな場所!」

そう笑顔で答えられると何故か私も笑ってしまった。


「うふふふ」


「えへへ」

そして二人は屋上の床に座り夜景を眺めながらドリンクを飲む。


「こんな高いところまで来てましたのね」


「ねっ!ここから見える小さな光が全部人が居るとこだと思うと凄いよねー」


「本当に凄い、花岡さん私をこんな綺麗な場所に連れてきてくれてありがとう」


「うーん、お礼言われるような事じゃないかもなんだけどね!見つかったらきっと怒られちゃうよ」


「ええ、その時は二人で怒られましょう」


「えー!全部詩子ちゃんのせいだって言おうかなぁ~」


「あらまぁ!」

二人は互いに顔を見合わせ笑い合う。


「ほんと言うとね、詩子ちゃん学校でいつも暗い顔してるから心配だったんだ」


「え?私が?」


「うん、なんか凄い追い詰められてるんじゃないかって感じで、それで…」


「そう…」


「うん」


「もうすぐね。日本で初めてのソロバイオリンのコンサートが控えてるの。それで今沢山練習してて…」


「そうなんだ!じゃあ仕方ないよね。ごめんね気づかなくて」


「い、いえ!違うの!その、そのコンサートは今までに誰もした事のない特別な事をする予定で…その」


「・・・」


「もしかして詩子ちゃんはその特別な事が嫌なの?」


「私は、私は…」


「ううん、無理して話さなくていいよ」


「うん、ごめんね」


「大丈夫だよ」

そう答える花岡さんの笑みに私は何度助けられるのだろうか。私の知らない世界を沢山教えてくれる花岡さんを私は、私は大好きなんだ。


「私今まで友達が出来た事なくて、ずっと音楽ばかりやってきてそれ以外を知らなくて…」


「そっかー、でもね本当の事言うと私も同じかもなんだ」


「え?」


「クラスメイトや友達には悪いかもなんだけど、あんまり本音で話せてないんだよね私。なんていうか、浮かないように必死でグループに居るって感じかな…」


「花岡さんが?そんな風に全然見えないけど?」


「そうなの、そう見えないようにしてるのきっと」


「そうですの…」


「でもね!詩子ちゃんは違うの!私初めて見た時から、その…友達になりたいなーって思って。それで思い切って食堂で初めて話しかけたの!」


「詩子ちゃんはなんかねー、雰囲気がやっぱりみんなと違くて、それでもっとお話して詩子ちゃんの事知りたいなーって」


「わ、私そんな…」

目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。


「え!?どうしたの詩子ちゃん!」


「ごめんなさい、ごめんなさい!花岡さんがそんな風に思ってたなんて知らなくてぇ、ごめ、んなさぁい…」

私は両手で顔を抑えて号泣した、泣いても泣いても涙は止まらない、止めどなくまるで体全体から涙が湧いてくるかのように泣いた。どうして私はこんな近くにいる優しい人を見捨てたのか?過去を悔いても、悔いても後悔しか感じなかった。私があの時花岡さんの為に行動していれば、きっと花岡さんは…


「大丈夫だよ。詩子ちゃん」

花岡さんは私が泣き止むまでずっと、優しく背中を撫でてくれた。


「もう、だひじょうぶぅだから」

泣き疲れた声で花岡さんに言う。


「詩子ちゃん、大変だろうけどあんまり無理し過ぎちゃダメだよ?」

その言葉を聞いてまた涙が流れそうになったが私は上を向いて必死に我慢した。一番無理をしているのは、そうだ。今の私に出来る事は限られてるんだ。それだけはしないと、もう後悔は嫌だ。


「花岡さん話しても良い?」


「うん、どうしたの?」


「この前ある人に聞かれたの、『あんたそれで幸せになれるのか?』って。それでその時私は答えられなかったの」


「でも今なら答えられる、『あなたが幸せになる事が私の幸せ』だって」


「うーん、ごめん詩子ちゃんなんの話かわかんないよ」


「うん、そうだよね。分からないよね、でも花岡さんに聞いて欲しかったの」


「あー!もしかして詩子ちゃんの好きな人の話?誰?誰の事?」


「ええと、間違ってないかも。私の大好きな人の事かな。けど誰かは秘密!」


「えー!もう!そうなんだぁー」


「うふふ」


「そーいえば詩子ちゃん!」


「はい?」


「花岡さんって呼ぶの辞めてよー、下の名前で呼んで!」


「え、う、うん。花岡さんがいいなら…」


「もー!それ!ダメ!」


こうして花岡さんと過ごした一日は終わりを向かえ、私はラボの自室に戻り夜を迎えるのであった。ベットに入り一日を振り返る。今日一日、たった一日で様々な事を体験して興奮しているのかなかなか寝付けない。いろいろな発見があった、そうこれは私にとってはまるで絵本の世界のような冒険譚ぼうけんたんだった。これからどんな未来が私達にあるのかは分からないけど、大事なたった一人の友達。


私はなによりも大事にしたいとただただ願うのだった。




次回 第三章 「アーティクル」 須藤翼すどうたすく編 【第三十七話 インシデントダイブ】

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