幕間

朝霞家の事情

俺の妹は現在、日本に百人近くいる、現代の被差別民「特殊臓器移植者」の一人になった。

悪魔の臓器を移植するという、一見、不可能のように見えるその手術には莫大な費用がかかった。 両親は手術費の半分も払う前に死んでしまった。 少しばかりの遺産を残して。


俺の妹は、悪魔の臓器を移植してから、人間の言葉が話せなくなった。 言葉の代わりに、犬のように唸っている。 ピンク色に光る羽が生えた。 頭には天使のような光輪が浮いている。

魔人と遜色ない風貌をしているけれど、それでも俺の大切な妹だ。


ある日、手術費の取り立てに、絵に書いたようなヤクザ達がやってきて、俺は否応なしに、無免許で巨塔の攻略パーティーに加えられた。 妹の残りの手術費の五百万と延滞料の百万、合わせて六百万円を働いて払えとのことだ。


俺は春から通い始めた高校をやめざるを得なくなって、今は同じような境遇の仲間達三人と、いつどこで死ぬか分からない巨塔攻略に挑んでいる。


こんな状況だけど、俺は必ず六百万円分、働いて稼いで、そうして妹に人並みの生活をさせてやって、いつかは結婚までさせてやるつもりでいる。 妹に似た甥か姪の顔を想像すると、元気になる。


あんたの夢みたいな話を寝る前に読むのが、もう一つの励みだよ。


ハンドルネーム「シグレ」より

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