広域組対 捜査官 猿渡喜龍 (3)

対象マル対と同じバスに……うるせえ、『マルタイ』ってインスタント・ラーメンじゃねえ。尾行対象の事だ。ちっとは黙れ、ボケ』

 レコンキスタの女警官から情報を引き出す為、その女警官の妹を人質にするって作戦……いや、我ながら付け焼刃の作戦だが、他に手を思い付かなかった……に投入した部下から連絡。

 だが、安徳グループの下っ端が手配したチンピラ達は、質がイロイロアレアレらしい。

「どこ行きのバスだ?」

『西鉄久留米駅方面です』

「わかった、じゃあ、そっちで落ち合おう」

 俺は……ネット・ジャーゴンで「誘拐に使われる車」の代名詞になってる車種のバンのキーを回し……。

 その時……携帯電話ブンコPhoneに着信音。

 えっ?

 別居中の嫁からだ。

「はい」

『あんた……今日、どうする気?』

「へっ?」

『今日は、月1回の龍星と優希に会わせてやってる日だよね』

 あ……。

 しまった。

 嫁と同居中の息子と娘に会う予定だった。

『塾とか習い事の日を調整してんだから、今日、そっちに用事が有って会えないんなら……次に会えるのは、かなり先になるよ』

「え……えっと……その……、あ、あの龍星と優希には……えっと……一一時に、先月連れてった焼肉屋の前で待ち合わせすると伝えてくれ」

 ああ、畜生。

 間が悪い……。

 仕方ねえ。

「俺だ。急に現場に行けなくなった。西鉄久留米駅近くの駐車場に車を置いとくから……車が必要な事には、渡してる予備のキーを……」

『あの……猿渡さん……』

 部下の携帯電話ケータイに連絡を入れると……電話越しでも不信感が伝わってくる声。

「どうした?」

『汚れ仕事、全部、俺達にやらせて、万が一の場合、自分だけ助かる気じゃ……』

「ない、ない、ない、絶対にないッ‼」

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