突然ですが、最近、空を見上げましたか?

卯瑠樹 夜

第1話 朝…

ピー、ピー、ピー、ピー、ピー、……


無機質な音でなるケータイのアラーム


「うーんっ…」


ゴソゴソと布団の中から腕を伸ばしアラームを止めた。


「仕事行きたくない………」


会社員、山本亮一(32)は少し掠れた寝起きの声でポツリと呟くと大きなため息をついた。

ハァァ…

…………………………

ピー、ピー、ピー、ピー、ピー、

突然アラームがなる。

しっかり消したはずが、スヌーズになっていた。

「う~っ…」

少し唸るとまた布団のなかで身動きしなくなった。

カンカンカンカン、

ブーン、

プップーー!

目を閉じてじっとしているといろんな音が耳にはいってくる。

亮一はそっと目をあけた。

「仕事いかないと」

自分に言い聞かせた。

風邪をひいてる訳でも、何か特別な用事がある訳でもない。それなら仕事にいかなければっ!

そう頭では分かっているのに体は重くなかなか動かせない。


(他のみんなは、仕事に向かってるんだろーな。こんなふうに朝からダラダラしてしまう自分はダメな人間だ)

そんなことを考えながらなんとか体を起こし、ダラダラと身支度を整えていく。



ふぅー…


(なんとか仕事に行ける格好になったな)

だが、気持ちはいっこうに準備ができずにいた。部屋にある壁掛け時計は、コチコチと気持ちの良い音をたてながら、亮一の気持ちとは裏腹に前に進んでいく。


(会社、休もうかな…)


そう考えた瞬間に頭の中に同僚たちの顔がよぎっていた。もちろん課長の顔も。

もし、休むのであれば連絡をいれなければならない。そうなれば必然的に課長と話さなければならなくなる。これが休みをもらう時に一番、嫌な瞬間だ。


(なんで、うちの会社は欠勤連絡が、ラ○ンじゃないんだ)


テレビやネットの中では欠勤連絡、また遅刻の際の連絡などラ○ンなどで済ませるところがあると最近、目にしたことがある。

そのことを初めて知った時の亮一は、連絡くらい電話でサッとすませろよ。くらいに思っていたが、今では直接相手と話さなくて良いそのありがたさがよくわかる。

特にズル休みの時は。


ケータイの連絡先の画面と見つめあうこと、10分、亮一はまだ会社に連絡できずにいた。


(やっぱり仕事に行こう、この時間ならまだギリギリ間に合うはずだ…)


そう思っているのに体はケータイを握って、腰はイスの上からなかなか動こうとしない。


コチコチ、コチコチ、…


1人で住むワンルームの部屋に休むことなく動き続ける時計の音がやけに大きく響く。


(どーするかなぁ…)

(連絡するにしても、そろそろしないと迷惑になるし、イヤ、そもそも休むことじたい迷惑をかけるよな…でも…)

1人頭のなかでグルグル考えてしまって、次の行動に移せない。


「あ~っ…!」

リアルで頭を抱えるポーズをとってしまう亮一。

「なにやってんだ…、俺。」


亮一は肩を落とし、床を見つめた。









(…仕事行かないと…)



第1章 朝… 終わり

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