鳥がいたのです。

エリー.ファー

鳥がいたのです。

  鳥がいたのです。

 本当です。

 あそこに、とっても珍しい鳥がいたのです。

 すっごくきれいな鳥で、羽が青色と黄色だったのです。

 本当なのです。

 珍しい鳥がいたのです。

 すっごく、煌びやかで、まるで宝石のような色の鳥だったのです。

 嘘じゃないのです。本当なのです。

 鳥というよりは、羽の生えた鉱石のような感じで、空の光を反射してこの中庭をカラフルに染め上げて、びっくりしたのです。

 中々飛び立たないから、もしかしたら置物なんじゃないかと思ったのです。でも、よく見ると息もしているし、少しだけ動いていたのです。だから、余計にびっくりしちゃって。

 いろいろな図鑑とかで、綺麗な鳥は見たことあるのです。ドキュメンタリーとかでも、見たことあります。でも、そのどれよりも綺麗なのです。すっごく気高くて優雅だったのです。

 外を歩いていたワンちゃんが。あぁ、このあたりをよく歩いてる、白いおじいちゃん犬なのですけど、そのワンちゃんも、じっくりとその鳥を見ていたのです。これは珍しいぞ、お嬢さん、こんなところで見かけることができて随分と幸運ではないか、と言いたげだったのです。

 私ですか。

 私ももちろん、確かに、こんなにきれいな鳥を見られる私は幸運かもしれませんね、ありがとうございます、おじいちゃんワンちゃん。と表情で伝えました。

 きっと伝わっていたと思うのです。

 しかも、ビッグニュースがあるのです。なんと、私がここで見ている間に、二回飛び立って、またここに戻ってきたのです。

 つまり、また見られる可能性が高いということなのです。

 きっとあの珍しい鳥は、数多くの国々を旅行してこの中庭に降り立ったのです。こんなところにちょうどいい休憩場所があるぞ、それ、休むぞ、とここにやってきたのです。この素晴らしい場所を覚えておこうと思ったに違いないのです。

 私にとっても幸運でしたが、きっと鳥さんにとっても素晴らしい幸運だったのです。

 ウィンウィンなのです。これは間違いなく、ウィンウィンなのです。

 私、あの鳥と仲良くしたいと思ったのです。で、近づいたのです。すると、なんと逃げなかったのです。私に触らせてくれたのです。すごく、いい匂いがして、しかも凄く滑らかな触り心地だったのです。

 え。野生の鳥は触らない方がいいのですか。え、病原菌だけじゃなく、人間のにおいがうつると仲間に嫌われる可能性がある。本当なのですか。

 そ。

 それは、その。

 触ってない気がするのです。触ったらそんな感じだろうと想像しただけなのです。間違いなのです。

 とにかく、そんな珍しくて綺麗で美しくて気高くて凄い鳥がいたから。

 私は急いで、あなたを呼びに行ったのです。

 めっちゃ綺麗な鳥がいますよ、と呼びに行ったのです。

 でも、戻ってきたらいなかったのです。

 すごく残念なのです。

 見せたかったのです。

 綺麗な鳥を。

 え、戻るのですか。

 部屋の中に。

 も、もうちょっと待ってみましょう。

 だって、何度も飛びたったけれど、何度も戻ってきているのです。

 ここで待っていたらすぐに戻ってくるはずなのです。

 ほら、ちょうど二人掛けのベンチもあるのです。毛布もあるのです。美味しい紅茶もあるのです。

 二人で鳥が来るまで待ちましょう。

 どんな綺麗な鳥が来るのかお話するのです。それが駄目なら、ワンちゃんの話でもいいのです。お話が嫌なら、この中庭で、こんな寒くても一所懸命に咲いたお花もたくさんあるのです。見て回ってもいいのです。

 だから。

 ちょっとでいいから。

 あなたと一緒に待ちたいのです。

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