7話。バフ・マスター、300人の美少女騎士たちから絶対の忠誠を誓われる

 王宮の中庭には、武装した300名ほどの騎士たちが、すでに集結していた。

 信じられないことだが、その全員が見目麗しい美少女だった。


「なっ、これは一体……」


「うーん、魔力のステータスが200以上か、魔法系のスキルを持つ者を選りすぐったら、こうなっちゃったのよね」


 リディアが肩をすくめる。


 女性の方が、男性よりも強い魔力を持って生まれてくる傾向がある。

 おそらく女子が多くなるだろうとは予想していたが……


「それにお父様が、私に悪い虫が付いてはいかん! って、編成に口出ししてきてね」


「悪い虫って……僕は良いのか?」


「アベルのことは、お父様も信頼してるみたいよ」


 ベオルブ伯爵家は、騎士の名門として王家に古くから仕えてきた。

 そのため、僕も国王陛下から、信頼を寄せられているようだ。


「王女殿下の近衛騎士団に志願するだけあって、みな肝がすわっているようですね。これなら、なんとかなりそうです」


 彼女たちを見渡したティファが、安堵の息をつく。

 初陣では浮き足立って、統率が取れなくなることが、何より恐ろしいからな。


 それに見たところ、下級貴族の子女が多いようだ。


「ただ、国王陛下のご意向もわかりますが、女子ばかりで前衛を任せられそうな者が少ないのは、なんとも……」


「そこは僕が前に出て、攻撃を引き付ける壁役になりたいと思う」


 ドラゴンブレスにも耐えられたのだから、大丈夫なハズだ。

 それに中隊規模の部隊では、指揮官が前に出るのが、士気を高める上でも重要だ。


「では私も前に出て、アベル様をお守りいたします」


「頼む。僕たちで前衛を固めよう」


 騎士は死ぬのも仕事だが、女の子が死ぬのはなるべく見たくない。

 ティファとふたりで、少女騎士たちをなんとしても守り抜こう。


「王女殿下と、アベル団長がお見えになりましたわよ!」


「あのお方が、竜殺しの英雄アベル様!?」


「うそっ!? 思っていたより、ずっと素敵な方だわ!」


 少女たちは、僕たちに気づくと、一斉に下馬して、臣下の礼を取った。


 僕はあまり女の子と関わった経験がないので、緊張してしまう。

 よし、気を取り直して……


「僕が王女近衛騎士団ルーンナイツの団長となったアベル・ベオルブだ! いきなりですまないが、5000ものアンデッドが出現して、村々を襲いながら、王都に向かってきている。

 これ以上、奴らの好きにさせる訳にはいかない!

 僕たちは、これから奴らを討伐に向かう!」


 そう宣言すると、さすがに少女たちに動揺が走った。


「ご、5000のアンデッドですか……!?」


「そ、それはさすがに……」


「大丈夫だ! 僕とティファが前衛としてみんなを守る。キミたちは後方から魔法で掩護してくれれば良い!」


 少女たちを安心させるべく、僕は声を張り上げた。


「ティファ? まさか……かのブラックナイツのナンバー2! 英雄シグルド様の直弟子である魔法剣士のティファ様ですか!?」


「ティファ・フィクサリオです。不肖の身ながらアベル様に剣を捧げ、ルーンナイツの副団長を拝命しました。

 私の背中にいる限り、みなさんに敵は近づけません」


 ティファが凛々しく宣言すると、少女たちから黄色い声が上がった。


「あ、あんなに小さくて、可愛らしい方がティファ様!?」


「きゃあああ! うちの妹より小柄じゃないの!?」


「ち、小さいとか言わないで下さい」


 背丈のことを気にしているティファは、顔を赤くしている。


「竜殺しのアベル様だけでなく、ティファ様までいてくださるなんて、頼もしいです!」


「公には知られていませんが、ブラックナイツが最強を誇ったのは、アベル様のスキル【バフ・マスター】のおかげです。

 アベル様がいる限り、ルーンナイツは無敵です。怖れず、私達について来てください」


「はいっ!」


 ティファの言葉に、少女たちから歓声が上がった。

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