パワハラ騎士団長に追放されたけど、君たちが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ?メンツ丸潰れだと騒いでるけど5回全滅しただけだよね?限界突破の外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
6話。バフ・マスター、王国の存亡をかけて5千のアンデットの大群に立ち向かう
6話。バフ・マスター、王国の存亡をかけて5千のアンデットの大群に立ち向かう
僕は味方になってくれたティファをリディア王女に紹介するために王宮に向かった。
ティファを僕の副団長にすることは、すでにリディアに伝えてある。
本来なら、もっと早く紹介したかったのだが。ティファは敗北の責任を取らされてブラックナイツから追放されており、一週間の謹慎を受けていた。
また、ちょうど今日はリディアが国中から集めた魔法の才能に長けた者たちが、僕の配下として、王宮に集結する予定になっていた。
新設される王女の魔法騎士団、全員の顔合わせとなる日だ。
「アンデッド! アンデッドの大軍です!」
王宮に入ろうとすると、汗だくの伝令兵が喚き散らしていた。
「何があったの!? 落ち着いて、詳しく話しなさい!」
リディアが騒然とする貴族たちを尻目に、伝令兵に問いただしている。
「はっ! 王女殿下。魔物どもと戦って死んだ我が国の兵たちが……主にブラックナイツの戦死者を中核として、5000を超えるアンデッドとなって、押し寄せて来ています!」
「ご、5000のアンデッドですって!?」
リディアも、さすがに顔を強張らせた。
絶望が、一瞬でその場に広まる。
アンデッドは物理耐性を持っている。
魔法使いの部隊が少ないアーデルハイド王国にとっては、天敵とも言うベき存在だ。
「【不死者の暴走(アンデッド・スタンピード)】です! 奴らは途中の村々を襲って、民を殺し、さらに仲間を増やしています!」
上位のアンデッドに殺された者は、アンデッドと化して、生者を襲う。さらにアンデッドは人を殺せば殺すほど、その力を増す。
この連鎖で、アンデッドが倍々に増えて、手が付けられなくなることを【不死者の暴走(アンデッド・スタンピード)】といった。
「まさか魔法王国フォルガナのしわざ!? あいつら、この国を滅ぼすつもりなの!?」
短期間で5000のアンデッドが発生するなど、あり得ない。
アンデッドを使役する【死霊使い(ネクロマンサー)】が、背後にいると考えるべきだろう。
「リディア! 新設のルーンナイツのメンバーは、すでに揃っているか!?」
僕はリディアに駆け寄って叫んだ。
「魔法使いの部隊でなければ、アンデッドの軍団は止められない。僕たちが迎撃に出る」
「アベル!? まだ300人ほどしか集まっていなくて……装備も整っていなし、まともな訓練もできていない状態なのよ!」
「問題ありません。例え、素人の集団だろうと、アベル様の【バフ・マスター】の力があれば、歴戦の戦士に匹敵する強さとなります」
僕に付き従ったティファが、うやうやしく告げる。
「あなたはブラックナイツの副団長ティファ!?」
「ごあいさつが遅れて申し訳ありません、王女殿下。この度、我が主、アベル様より、御身の近衛騎士団の副団長を仰せつかりました。ティファ・フィクサリオでございます」
「魔法戦闘に長けた騎士団を作るなら、ティファ以上の人材はいないだろ?」
「ええ! 心強いわ」
リディアの顔が希望に輝いた。
この一週間ほど、僕はティファに指導してもらって魔法の練習をしてきた。
魔法騎士団の団長が、魔法が使えないようでは、話にならないからだ。
今まではスキル強化にのみ時間を費して来たが、これからは魔法も学ばなければならない。
もっとも今回習得できたのは、基礎魔法のファイヤーボールだけだったが……
「おおっ! ここにおわすのは、竜殺しの英雄アベル殿と、元ブラックナイツのナンバー2。ティファ様ではありませぬか!?」
貴族たちが、僕たちの周りに集まってきた。
「これは頼もしい! お二方が指揮を取る騎士団ともなれば、かのブラックナイツを超える最強の騎士団となりましょう!」
「【不死者の暴走(アンデッド・スタンピード)】など、恐れるに足りませんな!」
「そうよ。アベルがいれば大丈夫よ! アベルはドラゴンよりも強いんだから!」
リディアも、自慢げに胸を張った。
「非才ながら、王国と王女殿下をお守りするため、アベル・ベオルブ。全力を尽くす所存です」
こんな期待を寄せられることなど、今までなかったので戸惑ってまう。
「アベル・ベオルブ伯爵! もしよろしれば、近いうちに私の娘をご紹介させていただきたいのですが……!」
「……娘?」
「こほんっ! みなさん、アベル様が出陣なされます。道を開けてください!」
娘を紹介したいという貴族の声を聞いたとたん、ティファが表情を険しくした。
「これは失礼! 我らはここでアベル様の勝利をお祈りしております!」
貴族たちの声援を背に、僕は配下となる者たちが集結している中庭へと向かった。
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