013 拡散
「ん?どうしたん?…コメントが1万件!?さ、再生数も100万回軽くこえてるしっ!」
思いっきりバズっていた。
『12:25~ これはチートですか…ガクブル』
『全国大会、やらなくても良いんじゃない?優勝者、もう決まってるよ。』
『日本人がFPS世界大会で優勝するときがやってまいりました!!』
『何も当たらなくてw』
『いやいや、我らがカナちゃんには勝てないさ!…勝てない…よね?』
『ワイ、この人と反対の山であることを心から願ってる。』
コメント
「あら…これは。
お金…もとい、再生数に目がくらみまくった友人に連れられ、編集部屋へレッツゴー。
まあ、ものごとにはタイミングというものがあるし、儲けられるときに儲けておくというのは、合理的な考え方だとは思う。契約したおぼえはないが、一応俺の専属スポンサー様らしいので、協力せざるを得ない。
―――まあ、
■
あれからわずか30分の
解説として参加させてもらったものの、申し訳ないことに
―――予測しているってことにした方が良かったかな?
イメージ的に格好良いとは思うが、やはり嘘をつくのはいかがなものだろう。それにFPSというゲームに精通しているわけでもないので、余計なことをすると必ずぼろが出る。俺みたいにぼろが出やすい人間は、正直に生きた方が得…というか、正直に生きていくしかないと思う。
■
「大樹!おめでとう!いやー、知り合いから聞いたよ。動画もすごい再生されてるんだって。」
東のおっちゃんだ。
「いや…まさか本当に優勝できるとは思ってなかったですけど…。ゲーム機も手に入ったし、ありがとうございました。」
おっちゃんが紹介してくれていなかったら、俺は今もゲーム機を探す旅を続けていたと思う。旅、旅とは言っているが、要するに電気屋さん巡りとネットの通販サイト巡り。苦痛なわけではなかったが、そんなに楽しいことでもなかった。
「ということは全国大会にも出るってことかい?」
「はい。来月のはじめにあるそうです。今度の優勝賞品は、賞品じゃなくて賞金らしいです。」
「え!?ゲームの大会でお金がもらえるのかい?すごい時代になったな…。」
「本当ですよね…。びっくりです。俊に言ったら普通だよって言われたんですけど…。」
俺もおっちゃんと同じ感覚だ。ゲーム機はまだわかるのだが、まさか賞金がもらえるとは思っていなかった。しかも想像したよりも
お金に興味がないというのは嘘になるが、拝金思想の持ち主というわけでもない。もし万が一、優勝することがあったら、まあ、大学にいったときの生活費にでもあてよう。
「そうそう、うちのお店にもFPSを入れることになったんだ。良かったら遊んでいってよ。…ところで、今日、俊君は?」
珍しく1人でゲームセンターにいる俺。別に俊と何かあったとかそういうわけではない。俊は今日、デートなのだ。後から聞いた話なのだが、実は俺の地方大会の日、本当はデートの予定があったらしい。しかし、再生回数にめがくらんだ俊は、完全に予定をすっぽかした。
―――珍しく怒られてたよな…。
怒られるというよりも、叱られていた。諭されていたと表現した方が良いかもしれない。
なんだか申し訳ない気持ちになるが、よく考えてみると俺に非はない。まあ、あんなに青い顔をした俊を見たのも久しぶりだったのだが。
俊の彼女は
お金は人を変える、という言葉があるが、あれはお金は他人も変える、が正しいと思う。俊が自分の正体を秘密にし続けているのも、そういった過去が影響している。亜美の存在は、俊のなかでとてつもなく大きいのだ。
「俊は今日、用事があって。…って、FPS入れてくれるんですか!?」
「うん。まあ、結構頑張ったけど、大樹が優勝したんなら、買わないわけにはいかないでしょう。」
とってもありがたい。
「ありがとうございます!頑張ります…ん?頑張る…
おっちゃんには申し訳ないのだが、とりあえずゲーム機を入手できたので満足している。もちろん出場するからには勝ちたいし、せっかくFPSゲーム界が盛り上がっているので、多少の
「うん。休みの日でも言ってくれれば開けるから。そうそう、世界大会もあるらしいけど、その時は俺もついていくから!」
「あはは…サーフィンですか?」
おっちゃんのサーフィン好きは、かなりのレベル。お店の利益は旅費に消えていると言っても過言ではないらしい。
「もちろん!」
やっぱり。おっちゃんは高らかにそう宣言した後、通常業務へと戻っていった。
サーフィンの話はさておき、世界大会まで行けたらどうなるのだろう。さすがに想像すらできない。現実的な問題として言語の壁が立ちふさがるとは思うが、ゲームは国境をこえる。そう、信じてる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます