Frame per Second
くるとん
第一章 不可能を可能に
001 連勝
なぜハエを叩くことが難しいのか。
ヒトとハエでは、脳の画像処理スピード、いわゆるフリッカー
ハエを上回るフリッカー融合頻度を持つ生物ならば、容易にハエを捕まえられるのかもしれない。
■
「うわっ!あ…ちょっとまっ…。」
攻撃を完全に見切り、放たれた右ストレート。完璧なタイミング、完璧なカウンターがさく裂する。
――――――ピロピロリーン
何とも言えない効果音とともに、プレイヤー2の体力ゲージが吹き飛んだ。レトロ感が
「よっしゃい!129連勝!」
もはやゲームを楽しむことよりも、いかにこの連勝記録を伸ばせるか、そこに重点が置かれている。もちろん世界は広い。ここは地元にある小さなゲームセンターだ。この連勝記録にどれほどの意味があるのだろうか。ただ、勝利を重ねるごとに増えていくギャラリーの数。それは俺に
「またノーダメかよ…どうやったら攻撃当てられるんだ…。」
「やばすぎ。まじであのカウンターはやばいって。」
「
ギャラリーさんが盛り上がってくれている。しかも「先生」と呼ばれるのは初めて。
誰かの言葉にもあった通り、俺の戦術はカウンターのみ。自分から攻撃を仕掛けることは、
もう一勝負、と思いポケットを探るが、10円玉が3枚のみ。両替をしてまで続けるほどの
「やっぱり大樹には
炭酸飲料のフタを開ける音が、
「ん?なんか言った?」
「いや、何でも。そういえば、新しいリズムゲーム入ったらしいよ!さっき
東のおっちゃんとは、ここの店主さん。ゲームセンターの開業が、確か俺が小学校に入ったときだったから、もう10
「リズムゲームかぁ。ゲーム機の賞品とかついてないかな?」
「大樹、最近そればっかじゃん…。」
俊に
お年玉をせっせと
「でも、さすがにちょっと
さっきやっていたのは
ただ、100連勝したあたりから、若干の「飽き」を感じ始めた。簡単に言うと、自分のなかで作業ゲーになってしまったのだ。相手の攻撃を見切り、ただカウンターを当てる。それだけ。単純なゲームは、一般的に「奥が深く飽きづらい」と聞いていたが、やはり限度はあるのだろう。
―――でも…趣味っていう趣味もないし。
一時期、あるマンガにドはまりしたことはあるのだが、数カ月前に最終話を迎えてしまった。足跡が描かれた最後のコマを見たときの感動、今でも鮮明に覚えている。思いで補正もかかり、他の作品を食わず嫌いならぬ、読まず嫌い状態。良くないとは思いつつも、どうしたって手が出ない。
―――カメラとか買ってみようかな?
特に興味があるわけではないのだが、何となく格好良いイメージがある。俺に似合うかどうかは別として、ああいうメカメカしいものには
行く先を無くしてしまったお金がある。良いカメラが結構な値段だと聞くが、初心者向けのカメラなら手が出せるかもしれない。
「明日さ、駅前の電気屋さん行かない?」
「昼からでも良い?俺、午前中に歯医者さんの予約入れてるんだ。」
「もちろん。じゃあ、1時くらいに、ここで。」
スマホを取り出し、スケジュール管理のアプリを開く。時間だけ入れておけば、忘れることもないだろう。
―――あらら…充電ないじゃん。
ここのゲームセンターと家は目と鼻の先。そんなに困らないが、コンビニエンスな現代社会を
「お、いらっしゃい!」
東のおっちゃんだ。サーフィンが
「ども。」
ペコリと頭を下げる。顔をあげると、なぜかおっちゃんがにやにやしている。俺の顔に何かついているのだろうか。
「大樹君にお知らせがありまーす!はい、これ。」
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