第1509話 与える者と与えられる者

親は子に愛を与える。子は愛を与えられる。子は時間の経過と共に親となり、愛を与えられる側から愛を与える側へになる。こうして世界は回っている。

だが……俺は、愛を与える側になれなかった。未だに独身である。このまま誰かに愛を与えなければ、生まれてきた意味などないのかもしれない。そんなことばかり考えてしまう。結婚もしたいが、相手が選んでくれない。だがどうしても子供が欲しい俺は、養護施設の子供を引き取ることにした。

子供はとても可愛いものだ。手がかかり、大変だけど子育ては楽しいものだ。子供がある程度大きくなった頃、俺は子供に教えた。

「いつかお前も誰かを愛し、与えられる者から与える者になるんだ」

「与える者?」

「そうだ」

「うん。分かった」

そんな妄想ばかりしている。俺はまだ子供を引き取っていない。決心がつかない。他人の子を育て、愛することができるのか?

俺は与える者になれるのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る