第1435話 クイックオーケストラ

近頃、タイムパフォーマンス。略してタイパという言葉が流行っている。タイパは時間対効果の事だ。つまりいかに短い時間で良い結果を得られるかというものである。時代は目まぐるしく変化し、実に忙しい時代である。そんなタイパの波は、音楽業界にも当然訪れた。近頃の曲は、イントロから印象的なものを持ってこないと流行らないのだ。開始して数秒であきられてしまう世界だ。だからこそ音楽の中でもオーケストラの世界は、とても生き残るのが難しい時代となった。 少しずつ盛り上がる優雅な音楽を大ボリュームで、そして壮大に展開されて締めくくられる。時代とマッチしないのだ。そこでオーケストラは、新たな秘策を編み出した。それがクイックオーケストラだ。わずか三十秒の曲を作り、それを流したのだ。クイックオーケストラの評判は上々で、以前よりもコンサートの売り上げは上がったのだ。時代と共にオーケストラの魅力も変化していく事に私は嘆いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る