第1362話 ヒューマンドロップ症候群

医学会で新たな病気が発見された。それがヒューマンドロップ症候群である。具体的にどのような症状が出るのかというと、その名の通り落ちた人間になってしまうのである。人が変わったように生活が荒れ、家族や友人など周りの人を傷つけるようになり、凶暴になり、最後は死んでしまう。これはウイルス性のものであり、ゾンビのように嚙まれたりすると感染していくというものだ。見た目はゾンビと違って普通なので分かりにくいのが、この病気の厄介なところだ。

「ごめんね。私、感染しちゃった……。私、もうすぐ……」

恋人のエミリーが涙ながら答えた。エミリーを抱きしめながらずっと一緒にいるから大丈夫だよと答える。しかしエミリーは、いつまで経っても発症しなかった。医学会は大いに喜んだ。エミリーは、特別な抗体を持っていたからだ。そこでエミリーの体を詳しく調査することになった。だがエミリーは、二度と帰ってくることはなかった。

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