第1360話 転げて世捨て人

裏社会で生きていくには、覚悟が必要だ。時には命を賭ける必要もある。だが俺は死ぬ気などない。生きて人生を全うしたいと願う。今日も殺しの依頼が来た。汚れ仕事は金になる。この男を殺してくれと言われ、見せられた写真を見ると、どう見ても一般人だった。こんな穏やかそうな男も裏社会と繋がりがあるのだろうか。分からないが、とにかく仕事だ。俺は殺すだけだ。男の住んでいる場所は寺だった。どうして寺なのか。かくまってもらっているのか?

俺を出迎えてきた住職、その男こそがターゲットだった。

「私を殺しに来たのかい?」

「ああ」

「裏社会はやめてここで僧侶にならないか?私もそうだったように、お前も心穏やかに過ごせるようになるさ」

「僧侶か。それも悪くない。良いだろう、なろうか。住職に」

俺は僧侶になった。裏社会から転げて世捨て人だ。充実した日々を過ごせていた。しかし、ある日、隙を突かれ、俺は住職に殺されてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る