第1359話 膝小僧
俺には誰にも言えない秘密がある。俺の膝には、小僧が住んでいるのだ。膝小僧は、時々うざい時もあるが、こいつのおかげで助かったこともある。例えば学生時代。テストでは、膝小僧のおかげでカンニングし放題だった。俺の成績は上位をキープできていた。
「おい。膝小僧。この問題の答えは?」
「織田信長」
「よし。じゃあこれは?」
そんな感じで、俺自身はそこまで勉強が得意ではなかった。就職してからも小僧に世話になった。
だがデートの時だけは別だ。小僧は恋愛が苦手だった。おかげで、ことごとく好きな人にはフラれてきた。
「お前のせいでまたフラれたじゃないか」
「オイラ、もう黙ってるよ」
それ以来、膝小僧の声は聞こえなくなった。なんだかとても寂しくなった。二十五年間、生まれた時からずっと一緒にいた兄弟みたいな存在だったから。
「小僧。なあ、膝小僧。返事してくれよ」
膝小僧の声は、二度と聞こえなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます