第1359話 膝小僧

俺には誰にも言えない秘密がある。俺の膝には、小僧が住んでいるのだ。膝小僧は、時々うざい時もあるが、こいつのおかげで助かったこともある。例えば学生時代。テストでは、膝小僧のおかげでカンニングし放題だった。俺の成績は上位をキープできていた。

「おい。膝小僧。この問題の答えは?」

「織田信長」

「よし。じゃあこれは?」

そんな感じで、俺自身はそこまで勉強が得意ではなかった。就職してからも小僧に世話になった。

だがデートの時だけは別だ。小僧は恋愛が苦手だった。おかげで、ことごとく好きな人にはフラれてきた。

「お前のせいでまたフラれたじゃないか」

「オイラ、もう黙ってるよ」

それ以来、膝小僧の声は聞こえなくなった。なんだかとても寂しくなった。二十五年間、生まれた時からずっと一緒にいた兄弟みたいな存在だったから。

「小僧。なあ、膝小僧。返事してくれよ」

膝小僧の声は、二度と聞こえなくなった。

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