第1347話 お尋ね者

この街には、お尋ね者がいる。悪い奴ではないんだけどね。

えっ?お尋ね者だから悪い奴だろうって?

ははっ、そうさ。ある意味で悪い奴なのかもしれないが、彼は悪気がないんだよ。


「有村さん。聞いても良いですか?」


ほらきた。お尋ね者の登場だ。


「なんだい?」

「シャーペンとボールペンってどっちがいいんですか?」

「シャーペンは消しゴムで消せる。ボールペンは消せない。でもシャーペンの芯は折れやすい反面、ボールペンの芯は折れない。だけどね、近頃は消せるボールペンも登場しているし、折れにくいシャーペンも出ているんだ」

「じゃあ紙の本と電子書籍は、どっちがいいですか?」

「紙はページにしおりを挟んだらすぐにそのページを開けれる。電子書籍はスペースがいらない」

「じゃあ和菓子と洋菓子、どっちがいいですか?」


そう。彼はお尋ね者なのだ。

色々な二択を色んな人に尋ねて歩く。それが彼なのだ。

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