第1300話 封切りアパート

ある日帰るとアパートが袋とじになっていた。一体どうすればいいのだろうか。大家さんの所に行って事情を聴いてみると、新しくリフォームしたらしい。リフォームなんてこんな短時間で出来るのだろうか。俺がちょっとコンビニに出かけている間だぞ。

「それでまだ入れないの?」

「封切りをすれば入れるよ。その役目をやってみないかい?」

「えっ?いいの?そんな大事な事」

「いいんだよ。封切りなんてもう何度もやってるからね」

そう言って俺は、アパートの封切りをすることになった。

封切りというのは、実にワクワクする。本の封切りをする時は、いつも心が躍るのだ。

「それじゃ、行くよ」

「うんうん。思いっきりやっちゃいな」

ビリビリビリ。

勢いよくアパートの封切りをする。

「ヤバイ。気持ちいい。癖になる」

「アパートの管理人になれば、封切りなんていつでもできるよ」

そう。それこそが、俺がアパートの管理人になった理由だ。

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