第1221話 ハサミで銀行強盗

ハサミを持った男が銀行に押し入って、何かをアピールしている。これは銀行強盗か。覆面を被っているし、周りの客達も恐怖していた。そのうちナイフや拳銃を出して脅してくるんじゃないだろうか。

「早くしろ」

「は、はい」

銀行員は、袋の中にお金を詰めて差し出した。お客様や従業員の身の安全が最優先だ。やむを得ない。

「違う。そうじゃない」

「は?」

「これを見て分からないのか」

「えっ?あの……ハサミですか?」

「そうだ」

すると男は、ハサミで紙を切って見せた。

「これでもまだ分からないか?」

「分かりません」

「ハサミで切る。チョキンと切る。貯金だ」

「えっ?」

「金預けたいんだけど」

「か、かしこまりました」

「お客様。その覆面は?」

「この時期、乾燥してるからな。アレルギーなんだよ」

紛らわしいお客様だ。私はホッとしながらお客様のお金を預かった。

しかし男達の本当の狙いは、入口手前ATMだった。

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