第1208話 焦げくさい秋刀魚

秋の味覚と言えば秋刀魚だ。この時期になると思い出す。秋になると、おばあちゃんが七輪で秋刀魚を焼いてくれていたのを。でもその秋刀魚は、いつも焦げてて……。ああ、懐かしいな。久しぶりに秋刀魚が食べたい。でも普通に焼くのではなく、七輪で焼いて食べたい。昔、おばあちゃんが焼いてくれていたように。おばあちゃんが亡くなってから、もう随分と経つ。確かうちの倉庫におばあちゃんが使っていた七輪が、まだ残っていたと思うんだけど……。倉庫を探していると、七輪が見つかった。掃除して使えるような状態にして、早速七輪で秋刀魚を焼き始めた。しばらく焼いていると、匂いに釣られて母がやってきた。

「あら、懐かしいわね」

「そう。久しぶりにあの焦げくさい秋刀魚食べたくなってさ」

そんな事を言っている間に、焦げくさい秋刀魚は完成した。食べてみると、なんだか思っていた味と違う。

「なんで?」

それは、おばあちゃんの味だからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る