第1206話 大将ライム

居酒屋<大将ライム>

そこには、酸いも甘いも嚙み分けた大人達が”酸い”を求めてやってくる居酒屋である。わざわざ”酸い”を?

そう、わざわざ”酸い”を求めて、今日も物好きな大人達が集まってくるのである。

「大将、やってる?」

勢い良く暖簾をくぐり、やってきたのは、二十代の若い新社会人の男を連れた中年の男だった。空いている席にどうぞと言われ、男達はカウンター席に座る。

「先輩、ここ何なんですか?」

「お前には人生経験が足りない。だからここの料理を食わせてやる。酸っぱい経験ができるぞ」

「それってお酢の効いた料理とかですか?」

「まあ食えばわかる」

一口食った新社会人の男は、気が付けば知らない土地にいた。そこで出会った人達と恋に落ちてフラれたり、お金を貸して裏切られたりした。そんな夢を見せられた。

「どうだ?」

「色々な酸いを経験しました。でも料理は甘いです……」

ここは人生の味を楽しめる。

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