第951話 グッバイサマー

夏とさようならをした。すると夏は、寂しそうな表情を浮かべながら肩を落として歩いていった。だって夏は暑いんだもん。炎天下では熱中症になるし、夏は一年の中でも一番危険な季節だからだ。そんな季節はいらない。だから夏とさようならをした。その代わりに春と秋が頑張ってくれた。長めの春が来て、長めの秋が来る。一年の中で過ごしやすい季節が長くなることで、快適に過ごす事ができた。

「やっぱり夏なんていらないよ」

夏という季節がなくなってから、数十年という時が流れた。今の時代の子供達は、夏を知らない。夏休みも知らない。おじいちゃんの家の縁側で、汗を搔きながら麦茶を飲むなんて行事を知らない。昔の人は、夏の思い出を語る。カブトムシを取ったあの夏。夏休みのギリギリで宿題に追われた事。そんな思い出を語る。昔の人達は涙を流しながら、夏があったあの頃の夏を懐かしむ。夏には夏の楽しさがあったのだ。グッバイサマー。

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