第922話 泣け、宴だ

騒がしい男じゃった。戦が終わり、宴の時間になると、あの男は一番盛り上がった。とにかく騒いだりする祭り事が大好きな男じゃった。喋りが饒舌であり、裸踊りの一芸にも秀でておった。そんな人を楽しませることが大好きなお主が戦の場で討たれてしもうた事は、我らの士気を大きく下げてしまう結果となった。


「のう、小次郎よ。お主はあの世で先に宴の準備をしておってくれ。我らもこの世で殿の命をお守り通す使命を全うしたら、すぐお主の元へ行くからの」


小次郎は愛された男だった。小次郎の為、宴を開こうではないか。そんな声が上がり、宴を開く事になった。宴には多くの者達がやってきた。


「皆の者、小次郎の為によく集まってくれた。今宵は亡き小次郎を想い、泣け、宴だ」


小次郎は宴の場所にひょっこりと顔を出していて、裸踊りをしているのかもしれない。そう考えるとおかしてワシも笑いながら酒を飲んだ。小次郎、あの世でまた会おう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る