第881話 神の気まぐれ

思い通りにいかないことだらけ。私には才能がない。音大に入って周りの皆は、次から次へとコンテストで入賞を果たしている。なのに私だけパッとしない。音楽を好きな気持ちだけは誰にも負けなくて、親に土下座して音大に通わせてもらった。なのに結果が出ない。この様だ。


神様――。

私に力を貸してください。


そんな強い思いを抱きながら次のコンテストに望んだ。しかし結果は残せなかった。またダメだった。

神様なんていない。この世は残酷なんだ。

「あー、もしもし。そこの」

「えっ?」

帰りの支度をしていると、コンテスト会場で話しかけられた。

「ワシは神じゃ。コンテストで優勝させてやろうか?」

「いや、もう終わりましたよ。まあ優勝できるならしたいですけどね」

何だろう。このお爺さん。サラッと受け流してさっさと帰ろう。

「只今のコンテスト、ミスがありました。優勝は……」


私だった。私は神の気まぐれで優勝した。

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