第861話 パパとクラゲ

娘が三歳の時の事だった。水族館に連れて行ってあげると、娘はクラゲに夢中になった。


「ねえ、パパ」

「ん?なんだい?」

「どうしてクラゲは、ぷかぷか浮いてるの?」

「海の中が気持ちいいからじゃないかな」

「パパも浮ける?」

「パパは浮けないなあ。泳げないから」

「私も浮きたい」

「じゃあ泳げるようにならないとな」


キラキラした目で言う娘の為、娘をスイミングスクールに通わせた。すると娘は泳げるようになった。

「凄いじゃないか。泳げるようになるなんてクラゲよりも凄いぞ」

「パパも泳げるようになろうよ」

「えっ?パパはできないよ」

「やればできるよ」

娘に励まされ、じゃあせめてクラゲのように浮くくらいは出来るようになろうと練習した。そして浮いた。ほんの少し泳げた。

「おお、浮いた」

「パパクラゲになったー!!」

水族館でクラゲに出会わなければ、この歳で少し泳げるようになる事もなかっただろう。

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