第812話 世界が終わる日に抱き合いながら

世界が終わる日に抱き合いながら死んでしまいたいと思った。全面核戦争によって世界は汚染された。もうすぐ世界が終わる。幸か不幸か生き残ってしまった私達は、もう何ヶ月もの間、生存者に出会っていない。本当にこの世界は、私達二人だけになってしまったのだろうか。


「世界が俺達だけの物になったみたいでなんかいいな」


彼は明るく私を元気付ける為に無理しているのが分かる。その態度が私にとってはとても嬉しく、温かい気持ちになる。唯一生き残ってくれたのが彼で良かった。


「生きてさえいれば、きっといつか生存者に会えるさ。頑張ろうぜ」


そして彼と一緒に生存者を探し続けた。だがやはり生存者を見つける事はできなかった。食料も残り僅かだ。いよいよ本当に終わりの時がきたようだ。


「ありがとう。君がいてくれたから俺はここまで生き延びられた」


そう言うと彼は私を抱きしめた。彼の腕の中で、私は意識を失っていった。

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