第803話 最悪と最高の出会い

「嬉しいよ、やっと離れられる」


彼の言葉はあまりにも酷く、私はその場で泣いてしまった。


「最低」


彼は浮気していた。せめて……


あの女とは遊びだった。本当に好きなのは君だけだなんて言葉があったのなら、彼の浮気を許したかもしれない。だって彼の事がまだ好きなのだから。でも吹っ切れた。もう彼の中に私はいないんだ。私は泣きながら夜の居酒屋を飛び出した。暗い夜、イラつきながら歩いていると酔った男が絡んできた。

「ひっく……。お姉さん泣いてるのぉ~?俺が慰めてあげようかぁ~?」

私は酔っ払いに蹴りを入れた。男はその場にうずくまった。

「ありゃりゃ。いや、お姉さんやりすぎだわ。せっかく俺が颯爽と恰好良く登場して助けてあげようと思ったのに」

「何よ。あんたも蹴られたいの?」

「冗談。俺はドMじゃないよ。どうしたの?機嫌悪いの?」


こんな最悪の出会いだったが、これは最高の出会いの始まりだった。

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