第743話 眼帯

ものもらいができてしまった。俺は眼帯を付けて鏡を見た。


「おお。格好良い。これは俺の右目に隠された能力を抑え込むための眼帯さ。フフッ」


数日が経ち、ものもらいもすっかり良くなった。しかし俺は眼帯を外さなかった。なぜなら俺の右目の能力を抑える為にこの眼帯は必要だからだ。

ああ、何か事件でも起きないものか。人助けしてえな。

学校に行く途中の事だった。横断歩道の信号が点滅しているのに婆ちゃんが渡れないでいた。


「おい、婆ちゃん。危ないよ!!」


声は届かず、婆ちゃんは横断歩道の真ん中で転倒した。そしてそこに車が猛スピードでやってきた。このままではお婆ちゃんが轢かれる。


「くっ……」


俺は右目の眼帯を外した。


「間に合え!!」


猛スピードで突っ込んできた車は、お婆ちゃんに当たる寸前でピタリと止まった。


「フッ……。まさかこんなところで俺の右目を使う事になるとはな」


という妄想だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る