第739話 最後の手紙

兄は私をかばった。私が変質者に襲われそうになっているところを助ける為に変質者を殺した。正当防衛だった。でも裁判では正当防衛は認められず、兄は殺人犯になった。日本の法律なんてクソだ。弱者なんか守ってくれない。


刑務所の中にいる兄から手紙が届くようになった。お前を犯罪者の家族にしてしまって悪かったという謝罪の言葉がいつも並ぶ。ついに兄の裁判が始まり、結果は死刑となった。私は悔しくて涙が止まらなかった。そして兄との手紙のやり取りは続いた。いつも私の事を気遣ってくれる内容ばかりだった。健康はどうか。恋人はできたか。仕事は上手くいってるか。自分が死刑になりそうなのに、いつも私を心配してくれた。


そして兄の死刑執行日が決まった。


――これが最後の手紙になる。だが俺は間違った事はしていないと思っている。死んだ後もお前を見守っているからな。幸せになれよ。


最後まで兄は、私の事を想ってくれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る