第674話 魔法のお薬手帳

お薬手帳。それは、自分が飲んでいる薬の情報を記した手帳であり、処方箋等の際に提出する物だ。私もそう思っていた。あの魔法のお薬手帳に出会うまでは。


「魔法のお薬手帳、凄くお買い得ですよ」


デザインが綺麗なお薬手帳だった。私はそのデザインが気に入って、魔法のお薬手帳を買った。


「使い方は簡単です。まずは手帳を閉じてください」


言われたとおりに手帳を閉じた。


「次に欲しい薬を思い浮かべて手帳を開いてください」

「目薬来い!!」


すると魔法のお薬手帳の上に、目薬が乗っているのだ。


「おおっ……」

「どんな薬でも出てきますよ。これで薬代が節約できますね」


これは良い物を手に入れた。しかし私が魔法のお薬手帳を使ったのは、ドライアイ用目薬だけだった。なぜなら私は健康体。薬に頼る必要がないからだ。そして私は寿命を全うした。結局、ほとんど魔法のお薬手帳に頼る事のない人生だった。

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