第670話 ピーマンはくすぐったい

今日は野菜炒めにしよう。私は野菜を買ってきた。人参等を洗う。そしてピーマンを洗った時だった。


「あはっ……あははっ!!くすぐったいよぉ……」

「へっ!?」


ピーマンが喋り出した。

しかし今日は野菜炒め。このピーマンを洗わなければ野菜炒めが作れない。

私は再びピーマンを洗う。


「あはは。あはははは。や、やめてよぉ……。くすぐったいったらぁ……」

「…………」


私は無言で洗い続けた。見ていない。何も見ていない。ピーマンが喋るはずがないんだ。これは幻聴だ。


洗ったピーマンをまな板に乗せてカットしようとする。


「包丁怖い。やめてよぉ……。危ないよぉ……」

「……あんた喋れるの?」


私は生まれて初めてピーマンに声をかけた。


「喋れるよ。当たり前じゃないかあ」

「いや、ピーマンは喋らないから。切りにくい」

「嘘嘘♪美味しく食べて欲しいな。さあやっちゃって」


私はなかなか切れなかった。

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