第618話 仮病

「先生、急患です」

「またか……」


私は医者をしている。近頃、大流行している病があるのだ。


「仮病ですね」

「仮病……?違う!!仮病じゃない!!仮に俺が仮病だとすると俺は……」

「落ち着いてください。あなた、最近仮説を立てる事が多くなってきてませんか?」

「仮説?」

「仮に〇〇だったら……と頻繁に仮説を立てる話し方になる。それが仮病の特長なんです」

「でも仮説を立てるのは、決して悪い事ではないのでは?」

「仮説はあくまで仮りの話なのです。それは憶測であり、事実とは限らないんですよ。ですからいきすぎた仮説を立てる事は危なく、それはもはや病と言えます」

「仮に俺が仮病だとして……」

「ほら、また。その”仮に”という言葉が口癖になる。それが仮病の症状、そのものです」

「どうすれば治りますか?」

「飲み薬を処方しますので飲んで様子見てくださいね」


これをいちいち説明するのがとても疲れるのだ。

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