第495話 自意識過剰ネクタイ

ショーケースに入っていたそれは、なんだか異彩を放っていた。私はそのネクタイに一目惚れし、店に入ってショーケースに入っているネクタイを下さいと言って購入したのだった。


営業の仕事をする上でネクタイは、その人の魅力を引き出してくれる。私を一目惚れさせたそのネクタイは、とてもセンスが良くて、誰もが見惚れてしまうだろう。きっとそうに違いない。これは明日からの仕事において、何か良い影響があるだろう。


私は翌日、早速新しいネクタイをした。出勤すると女性事務員の笹田さんが話しかけてくる。


「おはようございます。あら、近藤さん。そのネクタイ、いつもとなんだか違いますね」

「おっ、分かる?さすがは女の子だね。よく気が付くね。これ高かったんだよ。見る目があるね。どう?似合ってる?」

「……え、ええ。似合ってますよ」


彼女のリアクションを見て、私の買ったネクタイは、自意識過剰ネクタイだった事に気づいた。

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