第481話 満月のセレナード

屋敷の部屋の中。一組の男女が言葉を交わしていた。


「ねぇ。今夜も私の為に弾いてくれるの?」

「君は弾いて欲しそうだね。さてどうしようかな」

「あなたの奏でるピアノを聴いた夜は、心地よく眠れるの。だからお願い」

「ふふっ……。分かったよ。ならリクエストにお答えして弾いてみようか」

「ねぇ。今日は、何の曲を聴かせてくれるの?」

「シューベルト。セレナードなんてどうだい?」

「素敵。満月の見える今夜にぴったりな曲ね」

「恋人である君に贈るぴったりな曲でもあるんだけどね」

「嬉しい。ロマンチックなプレゼントだこと」


男はピアノを弾いた。部屋には男の弾くセレナードの優しい音が響き渡る。そして演奏が終わり、女は口を開いた。


「素敵な演奏だったわ。でも一つだけ不満な点があるの。あなたが狼男で満月の夜は、怖い狼の姿にならなかったらどれだけ良い事か」

「しょうがないさ。体質なんだから」


男は笑った。

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