第440話 新世界の扉

あの扉の向こう側か――。


あの扉を開ければ新世界へと行く事ができる。本当に行ってもいいのか?

もうこっち側へは、戻って来られないかもしれないんだぞ?

本当にそれでいいのか?

後悔はしないか?


俺は自問自答する。

扉の前で立ち止まり、何度も何度も深く深く考える。今思えばここまで来るのに随分と長い道のりだった。俺は何をやっても満たされる事はなかった。インドアな趣味、アウトドアな趣味、とにかく色々なものに手を出した。でもいつも何かが違う。完全に自分が満たされたと。そう感じる事はなく、人生が充実していると感じた事は、一度たりともなかった。だがそんな俺に可能性を示してくれたきっかけというのは、意外にも簡単なところからだった。本屋に行き、店全体をぐるりと見ている時に、スポーツコーナーで一冊の本に目がいった。


「ボディービルダーになろう」


俺は新世界の扉を開いた。

さあ筋肉が俺を呼んでいる。

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