第410話 たなかの名札
左の胸ポケットに付いた名札には、”たなか”とひらがなで書かれていた。たなかは、スーツ姿だった。正午の時間帯、うどん屋のカウンター席で隣に座ったその男は、きつねうどんを食べていた。そんな”たなか”は、私の方に向いた。
「ねぇ。お姉さん」
「はい?」
「僕の名前、何だか分かります?」
「たなか?」
「えっ!凄い!どうして分かるんですか?」
「だって名札が付いてるから」
「あっ、いけない!!名札付けっぱなしだった」
”たなか”は、そう言って、グーで自分の頭をポンッと叩いた。まるでぶりっ子の女子のようだ。
「というのは、嘘。名札を付けてるの忘れてたわけじゃないですよ」
嘘かよ!!何なの!!
「で?」
「実は、たなかって偽名なんですよ。お姉さん。僕の本当の名前分かります?」
「知らないわよ」
「僕の本当の名前、それは……中田です。田中の逆でした」
誰かこのうざい客を店から追い出してくれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます