第405話 ブドウ畑に立つ少女

ブドウ畑には、少女の幽霊が出るらしい――。


これは、知人のブドウ農家から聞いた話だ。ブドウを収穫していると、いつの間にかブドウ畑に少女が立っているらしい。彼女は一言も発する事なく、ずっと収穫の様子を見ているのだそうだ。不思議に思った知人は、少女に声をかけた。


「どうしてこんなところで立っているんだい?」


少女は、微笑んで口を開いた。


「今年は特に豊作だよ」

「えっ?」


その年、少女の言うように確かに例年よりも良いブドウが収穫できた。実は大きく、とても甘いブドウだった。知人は、少女の事をブドウの座敷童なんだと言った。やがてブドウ畑に立つ少女の噂話は、ブドウ農家の間で広がっていった。

そして現在、私は、おそらく噂のブドウ畑に立つ少女に出会っている。

彼女は幽霊ではなく、ブドウ狩りが大好きなブドウマニアの少女だった。色んな農家に出かけて、その年のブドウの出来栄えを見に行っているらしい。

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