第354話 おなかすいた

娘は三歳になった。よく遊び、よく食べる子だ。このまま元気に育って欲しい。


「ママ。おなかすいた」

「今作ってるからもう少し待っててね」


もう午後三時か。


「ママ。おなかすいた」

「うん、じゃあお菓子食べていいよ」

「ママ。おなかすいた」

「えっ?さっき食べたでしょ?」


まだ十分しか経ってない。お菓子が足りなかったのかと追加を与えても、娘はずっと「おなかすいた」と言い続けた。何だか体がおかしいんじゃないか。心配になった私は、小児科に連れて行って検査を受けさせた。


「こ、これは……!!」

「せ、先生。娘は何かの病気なんですか……?」

「いえ、娘さんは鉄の胃袋を持っています」

「鉄の胃袋?」

「はい。最近、大食い選手の胃袋を研究した論文がありましてね。これは大食い選手特有の鉄の胃袋で間違いないです」


娘は病気ではなく、鉄の胃袋の持ち主だった。むしろ病気どころか強い胃袋を持っていた。

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